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伊勢神宮の圧倒的な自然や迫力に心が震える日本初の4Kドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』


数多くの女優やタレントをグラビアや写真集で撮り続けてきた写真家:宮澤正明。
そんな彼が今回撮影したのは伊勢神宮やその森。それも、写真ではなくドキュメンタリー映画。

彼は、太古の昔より神社の頂点に立つ場所として日本人に崇められてきた伊勢神宮を長年に渡り撮影し、これまでに多数写真集なども展開してきた。しかし、今作映画「うみやまあひだ」で彼は写真では伝えきれなかった伊勢神宮への思いやそこに宿るパワー、さらに日本人の生活の基本である衣食住を担う森や自然との共存の意味を神職をはじめ、法隆寺の住職や脳科学者、植物学者さらには映画監督:北野武など12人の賢者たちの言葉を元に描いている。

宮澤と伊勢神宮との出会いは20年以上も前のことだった。

「私が最初に伊勢神宮を撮影したのは、平成16年の神嘗祭(神様に、秋のお米の収穫の感謝を伝える祭祀)です。その前に個人的に熊野を撮影していた際、知り合った方が伊勢神宮と親しくされていて、私が赤外写真作品『夢十夜』でアメリカのICP賞の第一回新人賞を受賞したことをご存知だったこともあり、最初はその技術をレクチャーしてほしいと言われたんです。伊勢神宮は深夜のお祭儀が多く、暗闇の中なので撮影が大変難しい。目には見えない特殊赤外線ストロボを当て、赤外線フィルムで撮影すると暗闇でも鮮明に写真か撮れる技術を教えたのが、前々回の第61回の式年遷宮(伊勢神宮で20年に一度行われる社殿を新造し御神体を移す行事)だったので、平成5年のころの話になります。そこからしばらくして、平成16年に式年遷宮の撮影の話をいただき、翌17年から8年間に渡り、第62回の式年遷宮を撮り続けました。

伊勢神宮、そして熊野も・・・。日本の長き歴史において今なお神聖なる地として崇拝されている場所だが、なぜ彼はそこに興味を持ったのか。

「30歳を過ぎた頃からライフワークとして撮影を始めました。熊野に関しては南方熊楠さんの本を読み、単純に彼が描いた宇宙観が見てみたいという事から興味を持ちました。神道だけじゃなく仏教や山岳信仰、そういった様々な宗教を内包し、なおかつそれを自然に求め、畏敬の念を人間が邪魔することなく同化しているところに興味をもちました。一方で、伊勢神宮はそこからもう少し進化していると思うんです。いわば、人間と自然の共存。同化ではなく共存するということは、畏敬の念も持ちながら、更にもう一歩進んでいる。そこに魅力を感じました」

写真家として活躍する彼が、今回あえて映画に挑戦した理由。それは、“写真では表現できなかったことがある”とのことだが、それは果たして……。

「映像を撮りたいという気持ちは以前からありました。そこで今回人間と自然、そして神が共存してきた二千年の長い歴史の中で、そこに日本人の原型があるんじゃないか、そして伊勢神宮が培ってきたDNAが日本に点在しているんじゃないか、そう思ってそれらを巡る旅を映画にしました。取材を進める中で12人の賢者と出会い、彼らから素晴らしい話を聞くことができ、私がそれに感動したように、みなさんにも何か気付いてほしい、この映画でその思いをダイレクトに伝えられればと思ってます」

今作「うみやまあひだ」は、伊勢神宮の森や自然が神秘的な風景や荘厳な様がダイナミックかつ繊細に収められた作品。その写真家ならではの美しき映像美は必見だ。

「神話の世界というより、むしろリアリティを追求したかったんです。撮影のタイミング的にもちょうど4Kのカメラが出たときだったので、早速導入して。私は今回監督という立場でしたが、写真家でもある以上、アングルや動きもほとんど自分で決め、私が指示を出し撮影出来たので、映像に関してはすごく納得しています。ただ、基本的に映画の撮り方じゃないと思うんですけど、それは考えず、ただただ自分が満足するものを求めました。なので、映像がきれいと言われると素直に嬉しいですね」

伊勢神宮は125の社から成っていて、一般的には内宮、外宮が有名。しかし、今回の彼の視点はそこではなく別にある。彼が最も伝えたかったのは、伊勢の自然と人間の共存だった。

「内宮や外宮、それ以外にも素晴らしい場所はたくさんありますけど、今回は伊勢という土地が本来持っている自然に対する畏敬の念、本来のスゴさを表現したかったんです。それをみなさんはパワースポットと呼びますが、映画の中でも脳科学者の方が言っているように、あの森には高周波のハイパー・ソニック・サウンドという耳じゃなく肌で感じるパワーがあります。今では論理的にそれが説明できることも面白いと思いましたし、その他にもいろいろな方がそれぞれ様々な伊勢に対する思いを持っている。でも、基本的にはみんな言っていることは同じで、伊勢が二千年間やってきたことは変わらない。そう思えたことが個人的にも感動しましたね。」

若い女性に人気がある要因の一つとして、伊勢神宮はパワースポットとしても有名だ。その厳かな地からはエネルギーが頂けると昔から信仰され、現在も日本随一のパワースポットとして、多くの参拝者が訪れている。そんな伊勢の地に何度も足を運ぶ宮澤もそこから何かしら感じるものがあったのだろうか。

「私は宗教心が強いわけでなないけれど、樹齢千年の樹木とかを見るとやっぱりゾクゾクっとしますね。遷御の儀(式年遷宮におけるクライマックスの神様のお引越しのお祭り)の夜など、清らかな風が吹いてきたりすると、肌で何かを感じることもありました。そういった説明のつかないものを肌で感じると、神という存在がいるのかもしれないと思います。でも、それは伊勢神宮が持つ独特な気配というか、昔の人が“いつもお天道様が見てるよ”って言っていたような感覚に近いですね。どこか気持ちを一度リセットしてくれる感覚。ただ、そう思うことで挨拶をしっかりしよう、ゴミを拾おうとか、何かプラスの気持ち、愛を感じる暮らしをしてみようと思うわけで、それこそがパワースポットだと思うんです。パワースポットに行ったからって大それたことが起こるわけでもないと思うし、伊勢神宮に行って運が良くなったって話も聞くけど、それはその人がその後一生懸命生きたからだと思うんです。でも、その気持ちが大事ですよね。パワースポットってそういう気持ちにさせてくれる場所だと思います。求めすぎるのではなく、気持ちを切り替えて明日から頑張ろう、前向きに生きていこうという変化を与えてくれる場所であり、その人にとって良い場所、それがパワースポットだと思います。実際、伊勢神宮はそういう役割を二千年間もしていて、だからこそ今でも多くの人が行くんですよね。」

今作「うみやまあひだ」は、ただ単純に伊勢神宮のドキュメンタリーとして存在するのではなく、それはある種日本人としての誇り、そして生き方をも考えさせられる作品になっている。様々な宗教問題が勃発する昨今、そして長年に渡り世界的な命題となっている環境問題、そんななか人間は自然とどう接し、どう共存していくべきなのか。しかも、あくまでそれを押し付けるのではなく、心に深く染み入り考えさせる、そんな不思議な力を持っている多くの人はパワースポットという認識が強いであろう伊勢神宮の森を題材とした今作の見所について聞いてみた。

「見所は3つあります。1つは美しい映像。4Kで撮っているので、その瑞々しさ、森の深さをぜひ見てほしいですね。2つ目は12人の賢者の方々の素晴らしい言葉。そこに耳を傾けてほしいです。最後に、今作はあえてナレーションを入れていないんです。理由は賢者の言葉や思いをダイレクトに伝えたかったので、それ以外の言葉は必要ないと思いました。音楽監督の方にもいろいろと相談して、結果ナレーションの代わりになるものを言葉じゃなく音で表現し、結果としてより作品に深みを与えることができたと思います。この3点に注目していただいて、あとは1人1人がこの作品から何かを感じていただければ嬉しいですね」

映画「うみやまあひだ」は、4月24日から30日まで、109シネマズ二子玉川にて期間限定公開。

<関連サイト>
「うみやまあひだ」 http://umiyamaaida.jp
写真家・宮澤正明 http://www.mmmp.net/