第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて、アジア唯一の選出作品として賞賛を集め、河瀨直美監督自身が「ターニングポイントになった」と語る映画『２つ目の窓』。そのBD＆DVD発売を受け、自然と神、そして人とが同時に共存する奄美大島を舞台に、二人の少年少女の初恋と成長を通して、繋がっていく命の軌跡を描いた本作への想い、そして最新作『あん』の想いも含め、世界が注目する異才：河瀨監督が赤裸々に語ってくれた。

――今回の作品が自身のターニングポイントとなったそうですね。
「育ててくれた養母が他界し大きな転換期になったという意味です。映画創りは、人生とかけ離れていないので、自分のプライベートで大きなターニングポイントを迎えたということは、作品にも大きく影響するということでしょうね」

――作風にも影響をすると？
「今回、杉本哲太さんや松田美由紀さんとご一緒して、次作の『あん』でも樹木希林さんとご一緒し、日本の中でよく知られている人たちに出演していただき共に作品を創る。そういう意味では日本人の観客の方には違う印象を与えるかもしれないですね。そうして各部署のスキルがあがると同時に作品の質も向上します。ですが、作品の本質的なものには大きな変化はないと思います」

――『あん』も今から楽しみです！
「編集してみないと映画はわからないですが、奇跡のショットだと思う映像は、けっこうありますよ（笑）。フランス人サウンドデザイナーも現場にずっと来てくれていて、音の付け方にこだわる方なので楽しみです。創ることにストイックで、これでもか、というほど徹底的に仕事をする。だから、時間はかかるけれど、いいものに仕上がるはずです」

――また、『２つ目の窓』BD＆DVDの特典映像について教えてください。
「メイキングとカンヌ映画祭舞台裏映像などです。メイキングは、現場での俳優とのやりとりなど、緊迫した雰囲気のものが多数。リアルにとらえられているので、ぜひ本編とあわせてご覧ください。また、公開時のニジトークで村上親子の対談が大人気でした。ソールドアウトもした本イベントの模様を収録しています」

――毎回、カンヌが……、など周囲から言われますが、監督にとって受賞は大事ですか？
「ものを創る人間としては大切なことではありません。しかし、作家が作品を作り続けていくためには、なにかの受賞が次の創作への大きなステップになるのは間違いありません。ブラジルの新聞記者が『僕にとってのパルムドールだった！』と言葉をいただいたり、カンヌの街の人が『わたしのパルムドール！』と言って声をかけてくれること。そういうこともまた次作への大きな力になります。フランスでの公開はこれまでのわたしの作品の規模を倍ほどに広げることができましたし、最高傑作だという評価もあります。具体的に“カンヌの受賞”には至りませんでしたが、まだまだ登る山があるのだと思う気持ちにはなるので、堅実に創り続けてゆく欲求が高まってありがたいと思っています」

――今が充実期だと思いますか？
「はい。世界の巨匠のフィルモグラフィーを見ていると、40代、50代の作品って、すごくいいじゃないですか。そういう意味では、自分が作家として充実した作品を出せる時期に入っているのかなあと感じることはあります。キャリアとスキルのあるスタッフ、俳優の方と作品を創れるようになったことも充実しています」

――今後の映画界ですが、どう発展してほしいでしょうか？
「日本の映画業界に関して言えば、もっと幅をもったほうがいいとは思います。しかしそのためにはオリジナル脚本を書ける創り手の育成やそういった若手のチャンスの場ももっと増えていいと思います。隣国の韓国では若手の映画制作者が育つ環境が整いつつあり、幅が広がっていると思います。もちろん映画界だけでなく“表現”事態の幅が広がるといいなと思います。人類がこの時代に残す表現物が単にお金を稼ぐためのものだけでなく、生きる糧になったり、その作品があって救われた、誰かを幸せにしようと思った。など、お金では買えないものを大切にすることってすごく大事だと思うのです」

――最後に一言、読者に向けてメッセージをお願いします！
「シンプルに海の美しさを感じて、お話の中に“リアル”を見つけてくださればと思います」

映画『２つ目の窓』のBlu-ray＆DVDは発売中。

© 2014“FUTATSUME NO MADO” JFP, CDC, ARTE FC, LM.
取材・構成・撮影／鴇田 崇（OFFICE NIAGARA）

＜関連サイト＞
映画『２つ目の窓』 http://www.futatsume-no-mado.com/
『２つ目の窓』（ポニーキャニオン） http://visual.ponycanyon.co.jp/pickup/movie/pcbp53186/