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“カメレオン俳優”中村倫也が語る役者の醍醐味、映画『星ガ丘ワンダーランド』インタビュー


役者生活10年という節目を迎えた昨年は、『マエストロ』ではティンパニ担当の楽団員役を、『王妃の館』ではオカマ役を、『やるっきゃ騎士』では無類のエロ好き誠豪介を熱演。どんな役にも染まるその姿から“カメレオン俳優”と称される中村倫也。

そんな彼が現在公開中の主演映画『星ガ丘ワンダーランド』で演じたのは、幼い頃に「必ず取りに行くから……」と言って赤い手袋を残したまま消えた母を待ち続け、現実逃避している青年・瀬生温人役。

キャストに新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏、市原隼人、木村佳乃、松重豊ら豪華俳優陣がズラリと並ぶ今作で、中村はしっかりと存在感を見せつけている。

演じるときに心掛けていることは“どんな役にも真正面から向き合って演じること”“常にニュートラルでいること”と語る中村が、本作では温人役とどう向き合ったのか、そして、役者としてのこれからなど話を聞いた。

――まず、本作の台本を読んで温人という男性像にどんなイメージを抱きましたか?

「温人は、苔(コケ)のような印象でした。ささやかにひっそりと自生しているけれど、見えない鎖みたいなもので過去に繋がれていて……、温人はその鎖の存在自体に気付いているかどうかも分からない。悪い人間ではないですけど、かといって特別いい人間でもない」

――そんな温人に共通する部分はありましたか?

「穏やかでささやか、あと波風を好まないところですかね(笑)」

――今回はどんな役作りを?

「温人だけでなくどの役もそうですが、生い立ちや家庭環境が違うので、もしも自分だったら……と想像を膨らませたり、いろんな準備が必要でした。今回の役は、あまり説明しすぎてはいけないし、温人としてただただ存在しているだけというイメージでした。ですので、撮影に入る前に準備したことを、撮影に入る時に全部捨てて、現場でまたイチから作り上げていきました」

――温人は落とし物を取りにくる人を想像しては似顔絵を描くことを日課にしていましたが、中村さんは撮影に入る前に必ず行うルーティンはありますか?

「ヒゲを剃って煙草を吸うくらいかな……、びっくりするくらいないですね(笑)。役を演じるときもプライベートのときも、常にニュートラルでいることがルーティンなのかも」

――今回錚々たるキャスト陣の中、主演ということでプレッシャーも相当だったのでは?

「もちろんプレッシャーはありました。でも、何をしたところでプレッシャーが解消されるわけじゃないですし、それはそれで置いといて“楽しもう!”みたいな感じで、プレッシャーは完全無視でした(笑)」

――中でも共演が楽しみだった人はいました?

「全員楽しみでしたし、そんな作品で主演を務めさせていただけるということで、気を引き締めて撮影に臨みました。市原(隼人)くんと新井(浩文)さんとご一緒するのは初めてでした。シーンでの絡みは全くなかったですけど、松重(豊)さんにまた会えるのが嬉しかったです」

――市原さん演じる楠仁吾は、温人が次第に心を開いていく存在でした。市原さんとのシーンで印象に残っていることは?

「市原くんとは同い年なんで、そういう嬉しさもありました。人間としても役者としても、自分とはタイプが真逆なので演じていてすごく楽しかったですね。彼は、台詞や行動が腑に落ちていないと動けないというか、いい意味で、羨ましいぐらい不器用なタイプ。現場で監督と話し合ったり、自分で確認したりして、腑に落ちるとものすごく推進力がある演技をする。同じ役者をやっていて、それってとても大事なことだよなって。一緒に居て得るものもすごく多かったですし、もっと市原くんとのシーンがあったら良かったのにと思いました」

――佐々木(希)さんとのシーンも多かったですが、印象はいかがでした?

「今回の七海という役はすごく難しい役なので、すごいな、頼もしくなったなと。彼女のことは、昔から知っているので、どうしてもお兄さん目線になっちゃいますね(笑)。これだけ容姿端麗で心根が優しくてすごく真面目だし、普段は素直で素朴な秋田の娘って感じです」

――柳沢翔監督や今村圭佑カメラマンと、若いクリエイターによる作品でしたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

「どの作品でも撮影初日に監督やキャストの方々と匂いの共有がどれだけできるかが大事だと思うんです。言葉で擦り合わせなくても同じ方向を向ける、それが今回は割と早く出来たような気がして……、現場は濃密すぎる時間でした」

――その順応出来るスピードの早さが、どんな役にも染まる“カメレオン俳優”と称される所以なのでしょうか。

「いつも早いわけではないですし……自分では分からないです(笑)。どんな役にも真正面から向き合って演じることが好きで、自分の思う関わり方でやっているだけなんですけど……。何をもってして“カメレオン俳優”なのかも受け取り方次第ですから。それよりも色気があるとか言われる方が嬉しいですね(笑)」

――中村さんは、俳優の仕事のどんなところに面白味を感じますか?

「面白い人とたくさん出会えることですね。面白い人たちと面白いことが出来るって最高です」

――昨年は俳優デビューして節目の10年を迎えましたが、これまでを振り返ってみていかがですか?

「役者としてももちろん人間としても、若いうちにいろんな失敗をさせてもらったのがよかったと思います。いろんな失敗を経験したからこそ、そこから得たことから若者らしく成長出来たんじゃないかと。“何事も10年やってみろ”という先人の言葉がありますが、10年やって見えてくることもあるし、逆に見えなくなることもある……、とても面白いなと思います。この先の10年がどんな風になるのか楽しみと不安が半分半分ですね」

――今年で30歳。30代でやってみたいことはありますか?

「年齢によってやれる役って変わっていくと思うんです。学生服からスーツを着るようになり、結婚の悩みを抱える役を演じるようになって……そういうときに年齢を感じますね。30代になったら、子持ちや離婚、部下を持つ人とか、役どころも変わっていくんだろうなと思うと楽しみですし、等身大で演じていきたいなと思います。そのためにも今しっかりと頑張らないとその先もないと思いますし、30代は試練のときですね。欲張りな性格だからなのか、早く老けていろんな役をやってみたいと思うこともあるんですけど(笑)」

――最後に、中村さんの思う今作の見どころをお願いします。

「とても美しい映画です。観終わった後にきっとじんわりと何かが訪れると思います。感情移入する場所も人それぞれですし、観る角度によっていろんな感想を抱ける作品です。美味しいラーメンなのかどうか、食べてみないと分からないのと同じで、ちょっとでもこの作品に興味を持ってもらえたなら、映画館に足を運んでいただきたいです! 友達50人……いや、30人くらい連れてたくさんの人に観てもらえたら嬉しいです(笑)」

映画『星ガ丘ワンダーランド』は、全国公開中!

© 2015「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

<関連サイト>
映画『星ガ丘ワンダーランド』 http://hoshigaoka-movie.com/
中村倫也と菅田将暉がガチ喧嘩!? 映画『星ガ丘ワンダーランド』メイキング映像公開 https://www.entameplex.com/archives/27636
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