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林遣都「初めてのことだった…」撮影中に号泣した話題のドラマ『火花』インタビュー


第153回芥川賞受賞。累計250万部以上。ピース・又吉直樹の処女作である小説『火花』は低迷が続く文学界で、文字通り“火花”となり暗い道を照らした。そんな同小説がオリジナルドラマ化され、オンラインサービス・Netflixにて6月3日より世界190カ国に全10話が一挙ストリーミング開始。物語ではふたりの芸人を軸に、純粋であることや生きがい、ドラマチックでは済まされない日常を開けっぴろげに描き出す。主人公の芸人のふたりを演じるのは俳優の林遣都と波岡一喜だ。林演じる努力型の「徳永」と波岡演じる天才肌の「神谷」、そんな対照的な人物を演じきった2人にインタビュー!

――完成した作品をご覧になっていかがですか?

林遣都(以下、林)「実際に役が決まって、役者人生10年分をすべてぶつけたつもりです。キャスト、スタッフ一丸となって制作に挑み、後世に残る内容になったと胸を張って言える作品です」

波岡一喜(以下、波岡)「……なんでしたっけ? 質問」

林「僕が長いから……(笑)」

波岡「遣都、いっつも答えるの長いよな。だから僕、途中で違うこと考えちゃうんですよ。遣都が全部いいこと言っちゃったので、もう同じでいいんですけど、まあお断りする理由は何一つないですからね。是非やらせてくださいって、即答でした。はい」

――(笑)。

波岡「今、地上波ではいろいろな規制があるなかで、この作品では好きなことをやってるじゃないですか。僕はほとんどのシーンでタバコ吸って、お酒飲んで……最後には裸にもなっているし。なかなか、そんなに自由にやらせてもらうこともないですから、楽しかったですね」

――作品の感想をお願いします(笑)。

林「うーん、うーん……そうですね」

波岡「僕から言っていい? 考えてるの長くなりそうだから(笑)」

林「はい、どうぞ」

波岡「ただのドラマチックな内容じゃないでしょう? 過激な出来事が連続するわけじゃなくて、しっかりと日常も描いている。毎回、『あ、終わった』と感じるけど、なぜか続きが見たくなるのは不思議ですよね。ついつい見てしまうのがこのドラマの魅力です」

林「あの映像クオリティ、5人の監督たち(※注)だからこそ、途中で見るのをやめられなくなっちゃうのもありますね」

波岡「まるでドキュメンタリーのように僕らの生活を切り取っていった印象です」

(※注:総監督/廣木隆一 監督/白石和彌、沖田修一、久万真路、毛利安孝)

――今回は各話様々な監督がつとめていましたが、基本的には台本に合わせてかっちりした感じではなかったと。

林「どう動くかを決めるとかは一度もなかったです」

波岡「どの監督もそうでした。バミ(位置決めのテープ)を引かれたりとか、まったくなかった。僕たちが動くとカメラや他のスタッフたちも一緒に動いてくれる。決めごとをほぼ作らずに演じました。恵まれた現場ですよね」

――アクシデントが起きてもそのまま進める感じ?

波岡「はい。シーンが終わってもカットがかからないんですよ。それで総監督の廣木監督を見たら、台本を持たずに僕らのほうをじっと見ているんです。そのまま。本にない徳永と神谷の会話が続いて、それが採用されたりもする。台本の読み合わせの段階でも、廣木監督からは『お前ら、ずっと徳永と神谷でいろよ』って釘を刺されました」

――林さんはアドリブが続くなかで印象に残っている自身の言葉はありますか?

林「コンビの相方・山下とケンカをするシーンで、彼がずっと下半身をもぞもぞしていたんです。そのとき、とっさに『チ○コ触んなや! お前』って」

波岡「さすがに『チ○コ』は台本にない(笑)」

林「撮影中に相手を見て、言いたいことがあったら反射的に口に出るようになっていましたね」

波岡「ト書き通りに行動したら、廣木監督から『違う』って怒られましたからね。その役としてやりたいか、やりたくないかが大事なので」

――そうなると、ご自身の役をあらかじめイメージしておく必要がありますね。

波岡「そうですね。現場では僕は神谷であり遣都は徳永であり、しっかりとした関係性がないといけない。役と素の自分を同一にできれば、カメラは関係なくなりますから」

林「ふたりがお酒を飲むシーンでちょいちょい波岡さんがボケてくるんですが、けっこう台本にない……」

波岡「(笑)。かなりあるな」

林「芸人さんって、プライベートでも凄まじいテンポで会話するんです。それをうまく表現したかったです」

――徳永と神谷の関係性が現実のふたりにも影響を与えましたか?

林「終盤のシーンで徳永が涙を浮かべながら漫才をして、それを客席のうしろから神谷が見ているというシーンがあるんです」

波岡「あのときオレのことじっと見てたよな。あれって台本にあったっけ?」

林「ないです。あれは僕がやりたくて。台本には『神谷が立っていた』としか書いていなかったんですが、徳永ならどこにいても神谷を感じて気づくはずって思いました」

波岡「ほとんどカメラは向いていなかったけど、僕はボロ泣きのまま漫才を見ていましたね」

林「あの場面にはいろんな想いがつまっているので。感謝やくやしさとか……ああいうのって役者同士が仲が悪かったら決してできないですからね。僕が波岡さんを好きだからこそ、やりたいって思ったんです。今回の現場もスタッフ 、キャスト、本当に信頼関係ができていた。だからこそ、リアルな作品に出来上がったのだと感じています」

――撮影の4カ月間、つねに役を意識する必要があったわけですが、波岡さん演じる神谷なる人物は「破滅型の天才」です。あの状態でいなければならないのは……。

波岡「しんどかったです。序盤はとにかく楽しくて仕方がなかったのに、終盤に進むにつれ神谷がどんどんと堕ちていく。反対に、徳永はどんどん売れていく。きつかったです……もう、ほんまにきつかったですね」

――林さんは徳永を演じる上でどのような心境でしたか?

林「僕は第1話から順撮りで、それこそ朝から晩まで徳永として過ごしました。全10話のなかで、本当に10年間を過ごしたような錯覚がありましたね。台本を読んで泣くことはほとんどないのですが、最後の本を読んだとき……こらえきれなかったです。どんどんと周りがいなくなっていく過程で、その全シーンで泣いてしまって。そんな感覚は初めてでした」

――つぶやきかたなど、林さんの演技と原作者の又吉さんがかぶる瞬間が何度も見受けられました。

林「原作が発売された当初、『徳永のモデルは又吉さんでは?』と騒がれていましたが、ご本人も否定していましたし、そこには囚われないように心がけました。ただ、劇中の漫才での言いかたなどは、又吉さんのしゃべり口調に似せている部分があります。相方・山下役の(井下好井)好井まさおさんが、『ここは又吉さんの漫才のセンスが出てるから』と、あえて寄せるようにアドバイスをしてくれたりもして」

――波岡さんが神谷の心境で共感するのは?

波岡「辞めていった芸人は無駄じゃないねん、と彼が熱弁するところですね。そうした人たちがいるから今のお笑いがある、という考えかたはすごいなと思います。僕はまだ役者を続けていますけど、一緒に目指して辞めていった連中はいっぱいいるし。あの言葉のおかげで僕が今やっていることがムダじゃないと思えるので。救われますよね。今どれだけうまくいかなくても、きっと意味があると思えるので」

――反対に有名になって失ったものはありますか?

波岡「あ、僕は有名じゃないので」

林「ああしてお酒を飲んで、毎日のようにボケとツッコミを繰り返す芸人さんの日常ってあこがれます。どんなにツラいこと、イヤなことがあっても自分を客観視して笑いに変えるのがすごい。そうすると日常生活のなかでも笑いが生まれてくる。そんな人生ってすばらしいと思います」


ドラマ『火花』は、Netflixにて配信中!
©2016YDクリエイション

■林遣都
ヘアメイク:SAYAKA
スタイリスト:菊池陽之介

■波岡一喜
ヘアメイク:SAYAKA
スタイリスト:黒田匡彦
衣装:KENT AND CURWEN、ロスガポス for STILIST

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