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映画ソムリエ絶賛! デートの誘いに最適な映画とは?


興行収入24億円、観客動員数160万人を突破し、ますます勢いを増すアニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』。このたび、本作の大ヒットを記念して、原作・脚本を手掛けた川原礫と映画ソムリエとして活躍中のタレント・東紗友美が、深夜アニメ発にして異例の大ヒットとなった本作の隠れた魅力について対談しました。

東紗友美(以下、東)「私、『ソードアート・オンライン』(以下、SAO)は映画から入ったんですが、ここまでゲームが舞台であることを明確にしたアニメを初めて観ました」

川原礫(以下、川原)「そうですね。ゲームっぽい設定の映画ならいっぱいありますけど、ここまでゲーム感を前面に押し出しているものは、なかなかないかもしれませんね」
 
東「アニメや原作をよく知らなくても、とても楽しめる作品でした」

川原「ありがとうございます。既存のファンをケアしつつ新規の方も楽しめる内容にするにはどうしたらいいか、何度も話し合いがありまして。そういっていただけるのは何よりです」

東「映画を観終わった後、一緒に映画館へ行った相手とデートしたくなるんですよ。劇中舞台の秋葉原UDX前や恵比寿ガーデンプレイスを聖地巡礼したくなっちゃいました。カップルでも楽しめる内容ですよね。どうしてここまで現実の風景描写にこだわったのですか?」

川原「個人的に、ゲームなどで再現される実際の風景にすごく憧れがあって。今回、劇場版の話をもらったときにぜひ東京の町並みを正確に再現したいと思ったんです」

東「個人的にお気に入りの場所は?」

川原「最初の戦いが繰り広げられる恵比寿ガーデンプレイスは、見た目が既ににゲームステージっぽくて好きです。一段下がった空間があったり。そういう場所って都内に意外とないんですよね」

東「実はちょうど昨日、恵比寿付近で仕事がありまして。ガーデンプレイスを通ったんですけど、なんだかモンスターが出てきそうな気がしました(笑)」

川原「そう思っていただけると嬉しいです。でも、その舞台のなかでもキリトとアスナが天体観測で登る埼玉の堂平山はハードルが高い(笑)。カップルで行こうとしたら相当大変です」

東「私、いろいろな映画の聖地巡礼が好きで、今度の休みに堂平山に行こうと思っていたんですけど……」

川原「あそこ、バス停から歩いて行こうと思ったら2時間くらいかかるんです。あの山は車で山頂まで行けるので、そちらをおすすめします。実際に映画を観てくださった皆さんが結構訪れているみたいですね」

東「ネットで堂平山を検索すると『SAO』って出てきますから」

川原「でも、デートムービー的な要素をうまく取り入れることができたのは伊藤(智彦)監督のおかげです。あの人、最近結婚して“リア充オーラ”がすごいから。独身時代の監督ならここまでラブラブ感を出せなかったと思います(笑)。完全にやっかみですけどね!」

東「ひどい……(笑)。ヒロインであるアスナのモデルっているんでしょうか?」

川原「『SAO』を書き始めたのは、まだ僕が20代の頃で。当時の僕が思いつける限りの“いい女”感を一生懸命書いたんですけど、とにかくいっぱいいっぱいでモデルさんを考える余裕がなかったですね。うーん……誰かと言われれば栗山千明さんの要素は少し入っていると思います。昔からすごく好きで」

東「ちなみに、私がアスナをいいなって思うのは、守ってもらうヒロインじゃなくて強くて自分を持っているからです」

川原「なるほど。そういえば、アメリカでは“守られるだけのヒロイン”って許されないんです。TVアニメシリーズ第1期の途中では、アスナが悪いやつに囚われの身になってキリトが助けに行く流れになりますが、アメリカの記者さんから『これは男性優位主義的だ』って指摘されました。なるほど、ポリティカリィ・コレクト(政治的に正しい)じゃなかったなって」

東「そんなことが!」

川原「それに、そういった意味ではキリトくんの“ハーレム感”が欧米ではキツいらしいです」

東「キツい? モテモテ主人公はダメってことですか?」

川原「日本のラノベやアニメは、女性たちの気持ちが主人公ばかりに向いているケースが多いですよね。それは国際的に通用しない感覚なんです。世界に売り込むにあたって、その辺りは最大のハードルになっていくんじゃないかって」

東「はっきりと言われたことも?」

川原「はい。Twitterとかで『キリトは早くその問題を解決すべきだ』と言われました(笑)」

東「“問題”って扱いなんですね。この劇場作品をどんな人に見てもらいたいですか?」

川原「コンセプトとして、客層をしぼることはやめようって。なるべく多くの方に観ていただけるものが作りたかった。どうやら、お客さんのなかには、ご年配の方もいるらしくて。とても嬉しいですね」

東「今回声優として神田沙也加さんや井上芳雄さん、鹿賀丈史さんが参加されていますよね。最近では女優や俳優が声優を務めることも多いですが、どのように感じますか?」

川原「確かにこれまでのアニメ声優さんの演技とは違うところがありますよね。僕も最初はそれを違和感と捉えていたんですけど、実際にアフレコを拝見して考えをあらためました。とにかく存在感がすごい。声優さんは自分の存在を消してキャラになりきる感じですが、俳優さんの場合は逆に存在感が増していくんです」

東「なるほど!」

川原「そうか、これは違和感じゃなくて“生きている人間らしさ”なんだって。終盤、井上芳雄さんが演じたゲストキャラのエイジが叫ぶシーンがあるんです。『SAOなんてクソゲーの記憶、もらったっていいじゃないか!!』って。その咆哮の生々しさは、普通にはなかなか出せないんじゃないかと思います」

東「エイジくんの叫びや鹿賀さん演じる重村の娘への思いなど、たくさん心を動かされました」

川原「それにキーとなるAIキャラのユナを演じた神田さんの歌声には心底震えました。人工知能の悲哀みたいなものがありありと伝わってくる演技もすごかった」

東「興行収入が20億円を突破しているようですが、これってものすごいことですよね」

川原「『SAO』って、一般に受け入れられない作品だと僕は思っていたんです。深夜アニメ発にしてはすごい結果ですよね。でも、こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、無理に『一般への壁』を超えなくてもいいのかなって気もするんです。そこにこだわりすぎると本当のコアなファンを切り捨てる危険性が出てくる。僕はそれだけは絶対にしたくないんですよ」

東「原点を大事にしたいと」

川原「まだ本格的にデビューする前のウェブ時代から僕のホームページで『SAO』を読んでくださっている人もいるわけで。その人たちは絶対に裏切りたくないんです」

東「そんな制約がありつつも多くの人に受け入れられたんですね」

川原「本当に監督や役者さん、スタッフさんの力です。感謝しかないです」

東「最近アニメが一般層に浸透してきたことも関係があるのでしょうか?」

川原「昨年はとんでもないヒット作品がひとつありましたよね。でもあれは、それこそ“彗星が落ちてくるような”確率の特殊な現象なので……」

東「(笑)」

川原「話が逸れましたが、『劇場版SAO』のヒット理由として作画と音の力はとても大きいと思います。もの作りって終わりがないんですよ。やればやるだけ先がある。制作側がギリギリまで諦めなかったことが心から伝わってきます。僕、あんなに動く戦闘シーン観たことないですよ。まさに、瞬きができないほどの密度でした! 音も凄い。ユナが歌うなかで戦闘するシーンはぜひ劇場で観直してほしいです。歌をBGMに使うっていうのはすごく難しいと思うんです。普通に使うと歌とキャラのセリフが混じってしまいますから。ゆったりとした曲調から勇ましい感じに変わる瞬間なんか、秒単位でピタッとハメなきゃいけない。実際にやろうと思ったらとんでもなく大変な作業です」

東「確かに、 言われてみればかなり大変ですよね……」

川原「クライマックスに駐車場でキリトとエイジが対峙する一方で、ステージではユナのライブが始まります。ユナの歌をバックに交互に物語が展開する疾走感がものすごい。あそこまで1カット1カットを曲にぴったりはめ込んでいくのは並みの努力じゃないですよ。あのこだわりや粘りがあったからここまでヒットもしたし、よい作品になったんだと思います」

東「なんだか、もう一度観たくなってきました(笑)」

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』は、大ヒット上映中!

©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

<関連サイト>
劇場版 ソードアート・オンライン
http://sao-movie.net/