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安全地帯、デビュー40周年記念のコンサート4公演を完走


1982年2月25日にファースト・シングル「萠黄色のスナップ」をリリース。今年でデビュー40周年を迎えた安全地帯が11月22日、23日、29日、30日の4日間、東京ガーデンシアターでアニバーサリー・コンサートを開催した。

ステージ上方には「V」字状の大きなトラスが組まれている。「V」は標識の安全地帯のマークであり、ローマ数字で「5」を意味する。デビュー以来40年、5人のメンバーで活動を続けてきた結束の証しだ。

スクリーンには雪山が映し出されスターダストのパーティクルが飛び交う。映像が春の景色に変わると、黒を基調としたモノトーンのコスチュームに身を包んだ安全地帯の4人がステージに現れ、襟の高い白いシャツに黒のロングコートを纏った玉置浩二が静かに歌い始める。オープニング曲は「あの頃へ(1992)」。続いて安全地帯デビュー曲の「萠黄色のスナップ(1982)」に「碧い瞳のエリス(1985)」が演奏される。玉置のヴォーカルは抑揚をセーブしながら、語りかけるように歌いじっくりと会場を温めていく。

次の曲の冒頭、場内には雷鳴が轟きレーザービームが飛び交う。始まったのは「プルシアンブルーの肖像(1986)」。ここからギアが一段上がる。抑えられていたヴォーカルは少しずつ拡げられ、テンポも徐々にアップしてくる。サビの『♪はなさない』のリフレインを玉置がギターの武沢侑昂の肩を抱きながら歌う。同級生だった玉置と武沢が中学生の頃、安全地帯の前身バンドを結成した。ふたりは最も古い戦友同士だけに、このシーンには感慨深いものがある。安全地帯のオリジナル・メンバーにはもうひとりギタリストがいる。矢萩渉だ。矢萩のギターは例えると”剛健”。一方、武沢は”繊細”。まったくタイプの違うギタリスト共存するのが安全地帯サウンドの魅力のひとつ。「好きさ(1986)」では矢萩の野太さと武沢の煌びやかさが絡み合う官能的なツインギター・ソロを披露し客席を酔わせている。そしてこの安全地帯サウンドのボトムを支えるのが六土開正のベース。自由なプレイを展開しながらも常に全体を包み込んでいく。

6曲目の「蒼いバラ(2010)」が終わると、玉置はギアをもう1段上げた。安全地帯屈指のダンス・チューン「熱視線」が始まるや、我慢できないとばかりにオーディエンスが一斉に立ち上がる。「ワインレッドの心(1984)」では歌詞の『~この夜』の部分を『ガーデシアターの夜を』と歌い替え客席から喝采を受ける。次の「Friend(1986)」を歌い終わると、玉置は胸に手を当てて客席に会釈し、静かに舞台を降りる。

スクリーンにはどこか懐かしさを感じる平原や稲穂が映し出され、ステージにはアコースティック・ギターを抱えた矢萩と武沢が美しい調べをつま弾く。本公演で唯一のインストゥルメンタル・ナンバー「夕暮れ(1986)」。この演奏が前半と後半のブリッジとなり、熱くなった客席をクールダウンさせてくれる。そして4人のホーン・セクションが静かにイントロを奏で、舞台には再び玉置が登場。ピアノをバックに広い会場の隅々まで響き渡るよう「あなたに(1984)」を朗々と歌い上げる。この曲がイントロダクションになって、そのまま「悲しみにさよなら(1985)」になだれ込んだ。客席は再び総立ち。サビではオーディエンス全員が両腕をゆっくりと左右に振り、心の中で歌う。

そしてスクリーンには、この日病気療養中のため参加できなかったドラマーの田中裕二が映し出された。客席の驚きと喜びの歓声がマスク越しから伝わってくる。田中の声でカウントが入り、華やかな祝祭ナンバー「情熱(1990)」が始まった。この曲でドラムを叩いている田中の音と映像に合わせ、メンバーも豪快な演奏をぶちかます。田中がドラム・ソロを披露すると、安全地帯の4人がスクリーンの前に横一線に並ぶ。時空を超えた奇跡の共演に観客も大喜び。最後は玉置が『安全地帯ドラムス、田中裕二!』と送り出す。興奮さめやらぬ客席へさらにたたみ込まれたのは「真夜中すぎの恋(1984)」。途中、2人のドラマーとパーカッショニストの3人によるソロまわしからのアンサンブル、矢萩のギターと玉置のヴォーカルのインプロビゼーションの掛け合いと見どころ聴きどころ満載だ。

このコンサートで安全地帯の4人をサポートするのは、ツイン・ドラムにツイン・キーボード、パーカッション、ギター、4人のホーン・セクションにアマゾンズ3人のコーラス隊。この大編成バンドがもっとも真価を発揮したのは安全地帯史上、最強・最厚のダンサブルなファンク・ナンバー「じれったい(1987)」だ。超弩級のサウンドを爆発させ、そこに真っ正面から対峙する玉置浩二の圧倒的な声量。とめどなく溢れ出す音の洪水に客席のボルテージも最高潮となる。さらにサポートメンバーが代わる代わるソロプレイを披露し、4ビートへのリズムチェンジでは六土のベースが冴える。さながらエクステンド・ミックスを聴いているような迫力だ。

この日演奏された楽曲は「蒼いバラ」を除いて、デビューからのおよそ10年間に発表された楽曲ばかり。古参のファンにとっては堪らない選曲だ。そして本編最後に演奏したのは「ひとりぼっちのエール(1993)」。最後の『La La La…』のコーラスに入ると、観客が携帯電話のライトを点灯させ左右にゆっくりと振る。場内至るところに点った光景は壮観。玉置も右腕を正面に掲げて応じ、感動的なエンディングとなった。

アンコールは鉄板ナンバーの「I Love You からはじめよう(1986)」。イントロが始まると同時にステージの左右からゴールドとシルバーの紙テープが客席に向けて発射。玉置が右腕の拳を振り上げ力強く歌うと、オーディエンスも右腕を上げて応じる。ステージと客席が完全に一体化したことを祝うように、天井からはハート型の紙飛行機が舞い落ちる。最後は安全地帯の4人が横一線に並んで、バンドの象徴である「V」サインを掲げ、安全地帯40周年記念コンサートの幕が閉じられた。終演後はオープニングに演奏した「あの頃へ」のメロディーが会場に流れ、集まってくれた観客を送り出した。

text:石角隆行

<関連サイト>
安全地帯、デビュー40周年イヤーに約11年ぶりの新曲発売
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