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既存の牛肉感が吹き飛ぶ味 老舗「なだ万」の新たな試み


高いビルが軒を連ねる麹町に、料亭のような温かみのある入り口がぽつり。中に入ると、大川組子や博多織など福岡の伝統工芸を装飾した内装に目を奪われる。東京のオフィス街なのに、まるで地方に迷い込んだかのようだ。

ここは「麹町なだ万 福岡別邸」(東京都千代田区)。福岡のうまい食材を、老舗日本料理店・なだ万が腕によりをかけて多彩なメニューに仕上げる。同社が、地域に特化したレストランを運営するのは初の試み。どんな形に仕上がったのか。1月26日(木)のグランドオープンに先駆けた、オープニングレセプションで確かめた。

イベントでははじめに、服部誠太郎・福岡県知事が登壇し、2018年から営業していた福岡県のアンテナレストランを新たに「麹町なだ万 福岡別邸」へとリニューアルした経緯や、福岡の誇る食材を紹介した。続いて登壇したなだ万の巻木通浩・代表取締役社長は「福岡の魅力を、私たちの料理を通してしっかりアピールしたい」と意気込みを語った。

その後、同店のロゴをデザインした書家の紫舟(ししゅう)氏のあいさつや、店内の花をコーディネートしたフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏のビデオメッセージ、福岡産の日本酒のテイスティングクイズなどが続き、会場は盛り上がった。

そしてこの日、来場者に振る舞われたのは、なだ万の料理人が腕によりをかけてつくった至高の料理の数々。福岡の匠の技で彩られた小箱の中には、まるで宝石のように整列したお造りや焼き物、煮物などが並ぶ。もちろんどれも、福岡の自慢の食材を使ったものばかり。

甘エビと博多ブナシメジ、筑後セロリに博多明太子をあえた小鉢は、時折やってくるピリリとした辛さがくせになる。お造りでは、日本の槍を思わせるケンサキイカの「一本槍」が、あっという間に口のなかで溶けた。

蒸し物は、馬鈴薯(ばれいしょ)まんじゅうの上にあしらわれた花の形のニンジンが美しい。やさしい味付けだ。それから何より、メインディッシュの「博多和牛ロースト 野菜添え」が白眉(はくび)だった。稲わらを食べて育った博多和牛のローストは、見た目は霜降りでないのに甘く柔らかい。大げさだが、これまでの“牛肉感”を吹き飛ばすような感覚さえある。

イベントの途中にオンラインで参加した福岡県肉用牛生産者の会・鈴木雅明会長が「日本一の自慢の味」と自負するのもうなずける。鈴木会長によると、博多和牛を東京で食べられる機会はなかなかないという。

さらに、元気つくし米と「はかた地どり」を使ったつやつやのかしわ飯や、イチゴの品種「博多あまおう」を添えたブラマンジェなど、“福岡づくし”のメニューは続いた。

聞けば当初、地域を打ち出した飲食店をするのになだ万内で戸惑いの声もあったという。しかし「老舗はいつも新しい」と掲げる巻木社長の「やってみよう」の一声で、この挑戦は決まった。技術で客をうならせてきたなだ万が豊かな土地の食材をどう料理していくのか。注目だ。

<関連サイト>
「麹町なだ万 福岡別邸」公式サイト
https://www.nadaman.co.jp/restaurant/kojimachi