Entame Plex-エンタメプレックス-

芝居の常識をぶち壊す舞台「ツチノコの嫁入り」、主演の山本裕典がその魅力を語る


9月5日より全国公開となった多部未華子主演の映画「ピース オブ ケイク」の劇中劇がまさかの“旗揚げ”!? 作品内で、ヒロイン役の多部を優しく見守る“オカマの天ちゃん”が所属する劇団めばち娘の演目「ツチノコの嫁入り」が、9月17日よりCBGKシブゲキ!!にて実際に観劇できるのだ。作/演出に劇団鹿殺しの丸尾丸一郎、看板俳優の天ちゃん役に映画『ハンサム★スーツ』『大洗にも星はふるなり』ドラマ『タンブリング』で主演も務めた俳優:山本裕典を迎え、阿部丈二をはじめとんでもなく個性的な連中が脇を固める。そこで、エンタメプレックスは主演を務める山本に今劇にかける意気込みを聞いた。すると、そこから彼の演技に対する意外な思いが明らかに……。

――演目「ツチノコの嫁入り」とはどんな内容ですか?

「すごくアバンギャルドな内容で、出演者も多いです。セリフにも出てくるんですが『カブりすぎて見えないよ!』って(笑)。演者も個性的なキャラクターを要求されて……」

――演者が並んだ画を見るだけでクラクラしてきます……。個性的すぎますね。

「今回、僕はオカマの役で一番ぶっ飛んでいるんじゃないかという気がしますが、実は一番ふつうなんです(笑)。僕も最初にオカマと聞いたときは、『何をしでかしてやろう』なんて意気込んだんですけどね。」

――劇団鹿殺し・丸尾丸一郎さんの演出はいかがでした?

「僕が今まで舞台などで演じてきた人を笑わせたり楽しませたりするお芝居とはまったく違いました。僕が想像する『こうやったら面白いんじゃ?』の反対側でした」

――例えば?

「僕が大爆笑するお気に入りの演者に(丸尾さんは)すごいダメ出しをするんですよ(笑)。全然違うところの笑いを求めていたりとか。僕がこれまで出会ってこなかった芝居の質や発想でした。ものすごく勉強になりますね。そこまでやっちゃうんだ! って。色んな芝居の常識の壁を壊しています」

――稽古も終盤ですね。(※インタビューは公演の約2週間前)

「(演者は)みんな怯えてますね」

――怯えてますか(笑)。

「(演出が)みんなの想像を2周3周超えてしまっているので。『これでいいんですよ……ね?』的な(笑)」

――今作で山本さんが演じる“オカマの天ちゃん”はどのような人物ですか?

「天ちゃんは、劇団めばち娘の看板俳優です。小さいころから男の子が好きで、でも自分も男で悩んでいる。その後のきっかけでオカマになって、幸せに人生を送っていたんですけど、重すぎる愛ゆえに問題が発生します。天ちゃんのような人は多いと思うんです。心と身体が一致しなくて悩んでいる人が。でも、それを吹っ切ったときにすごくハッピーで魅力的な人になる。天ちゃんは本来そういう人間だと考えています」

――オカマを演じるとクセになるとも聞きますが、いかがですか?

「新しく届いた衣装を着て、稽古場の鏡で自分を見ると気持ち悪いですね。ハマらないです(笑)。これまでにドラマなどで女装はしたことはあるんですが、今回は“ガチ”なので。」

――ガチ(笑)。

「それでも俳優:山本裕典がオカマの格好をして舞台に立っているというシチュエーションは『おいしい』と感じています(笑)。キャラクター感に助けられている部分は正直ありますね」

――山本さんはどちらかといえば、映像の世界を中心に活躍しているイメージがあります。そんな山本さんから見て舞台の魅力とは?

「僕は『仮面ライダーカブト』で俳優デビューしたのですが、実はですね、最初のころ芝居が嫌いだったんです。ただ人気者になりたくて。でもテレビの世界ではなく、ある舞台作品に参加したとき、僕と重なる役をいただいて。そこに自分の体験を盛り込んで」

――それが転機となった?

「当時、僕はすごく悩んでいました。取材を受けているとき、マネージャーと一緒にいるとき、友だちと遊んでいるとき、現場に行ったとき、一体どれが本当の自分なんだろう、と。色々な人にネコをかぶっている自分がいて。いや、もうネコをかぶっているのかもわからなくなっていましたね。居心地が悪くてこの仕事がとても嫌だったんです。辞めようかとも思ったくらいで……」

――そうだったんですね。

「そのとき、テレビの仕事もこなしながらの舞台だったので、すごく大変だったんです。でもやりきったとき『舞台って、お芝居ってすっごい楽しいな』と思えて、そこから舞台で達成したことや学んだことをドラマの仕事に持っていけたんです。自信に繋がったんですね。『これは間違っちゃいない。大丈夫』って」

――意外なお話でした。

「そこまで自分を支えてくれたのは舞台だな、と思っています。蜷川幸雄さんや宮本亜門さんの舞台に出させていただいたときにも、回を重ねるごとに演技へのフィードバックになって。階段に例えるとドラマが平らな部分で実践の場だとしたら、舞台は縦に登る部分だと思うんです。挑戦する、学ぶ場といいますか」

――今回の芝居も「縦の部分」となりえますか?

「みんなの芝居の稽古を見ているだけでも勉強になります。ダメ出しを受ける演者を見て『俺も同じようにやっちゃうな、なるほどこうすればいいのか』と考えたりもします。今の時点で登りかけているのがうれしくてしょうがないんです」

――舞台の成果を楽しみにしています。では最後にファンにメッセージを!

「今回の舞台のテーマが『深いようで浅い、浅いようで深い』なんです。まずは面白い、でもあとで考えると、そんなテーマのフレーズが何度も出てきていることに気づかされたりする。まるでジェットコースターに乗ったような気分になる作品です。絶叫マシンから降りたらなんだか気分よくなっているじゃないですか?あっというまに終わっている。それからしばらくして『ああ、こういうことを伝えたかったんだろうな』と思える内容です。ぜひ劇場に足を運んでみてください!」

劇団めばち娘 旗揚げ公演「ツチノコの嫁入り」は、9月17日(木)~27日(日)までCBGKシブゲキ!!にて上演。

映画「ピース オブ ケイク」は、全国公開中!


© 2015ジョージ朝倉/祥伝社 /「ピース オブ ケイク」製作委員会

<関連サイト>
舞台「ツチノコの嫁入り」 http://shika564.com/mebachiko/
映画「ピース オブ ケイク」 http://pieceofcake-movie.jp/
山本裕典、まさかまさかの魅惑のドラマ「ハング」、出演する本人も大ハマり https://www.entameplex.com/archives/15568