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SKY-HIがブチ壊すHIPHOPの壁「特定のジャンルやブームには興味ない」


パフォーマンスグループ「AAA(トリプルエー)」のラップ担当としても知られる日高光啓。そして、彼はまたSKY-HI名義でソロ・ラッパーとしても活躍中だ。その甘いルックスで多くの女性ファンを虜にしながら、一方ではとにかく高い評価を受ける類まれなラップセンス。その実力は、現在話題沸騰中のMCラップバトル『フリースタイルダンジョン』でラスボスをつとめるラッパー界の大御所:般若をも唸らるほど。一見スマートなSKY-HIだが中身は超無骨。音楽シーンへの真摯な姿勢と発言は「この男に弱点なしか?」とうらやむ男性陣さえも夢中にさせてしまうのだ。

そんなSKY-HIが7月27日にニューシングル『ナナイロホリデー』をリリースした。Entame Plexは、楽曲に込められた想いや9月からの新たな全国ツアーへの意気込みについて話を聞いた。

――最新シングル『ナナイロホリデー』は、前作シングル『クロノグラフ』(5月11日発売)を発表してからすぐのリリースですね。ファンにはうれしい限りです。

「これは勢いを可視化したい、との思いがあったからです。前アルバム『カタルシス』をリリースしたあと、周りから“最近調子いいね”“勢いあるな”なんて言われることが多く、自分でも感覚的にそうした流れを感じていました。いい風が吹いているのに飛ぶ道具がないとこ困っちゃうから作り続けようって」

――『ナナイロホリデー』は大変夏らしいポップチューンですね。この曲にはどんな思いが込められているのでしょうか?

「ひと言でいえば、今年あったホールツアーが“ホント楽しかったな~”って曲です。実はこの曲、最初に作った内容とずいぶん違うんです」

――そのようですね。最初に作ったものは別曲として、タワーレコードの予約特典になっていると聞きました。

「はい。ツアーが終わった3月にすぐに製作してレコーディングしました。そのときは、夏ならではのセクシーな部分や裏テーマとして当時流行っていた不倫を入れてみたりとかしました。こちらもぜひ聴いてみてほしいです。それに、ノドの手術直前に録音しているので、これまでと違う歌いかたでなかなか面白い」

――ノドの手術後は1カ月ほど活動休止していたそうですね。

「歌えないし、曲も作れない。それが想像以上につらくて、情緒不安定になって術後1週間で5キロも太ってしまったんです」

――1週間で5キロ!?

「でも歌えるようになってから、体を鍛え直して8キロ落として、結局もとよりやせてしまいました(笑)」

――普段の体重から3キロ落ちた(笑)。

「でも体力的にもパフォーム的にも、人生のなかで今が一番調子いいと思う。だからこそ先ほどの話のようにスピードを落としたくなかったんです」

――術後回復して再び歌い始めるときはどんな気分でしたか?

「めっちゃワクワクしました。最初は全然声が出なくてヤバいな、と思うんですけど、曲を作る作業を1カ月ぶりにしたとき、『何作ろう?』って気持ちが高ぶって。これまでは完全に立ち止まることはなかったから……なんだろう、とにかく楽しくなっちゃって。音楽をできることってこんなに幸せなんだって感じました」

――すばらしいことですね。

「部屋でひとりで作曲しているだけでこんなに幸せなのに、それを共有できる仲間たちがいてホールツアーを回ったことが、なんて幸福だったんだろうと1カ月経って噛みしめたんです。そこで、あらためて『ナナイロホリデー』をレコーディングし直したんですよ。『ツアー、ヤバかったな』って」

――どうですか? 以前のものと聴き比べてみて。

「バイブスが違う。以前の楽曲は“楽しい”をつめこんだものですが、新たな『ナナイロホリデー』は、“幸せ”をつめこめているんです。今の自分にとって、よりよい作品になったと思いますね」

――そう聞いてから歌詞を見ると、日高さんがツアーで感じたことが鮮明に描かれていますね。

「そうなんです。この内容は全部ライブ中の出来事なんです。歌詞の“必ず戻ってくるから”はツアーの最後に観客に向けたメッセージとしての意味と、手術後の復帰戦を示唆しています」

――9月からは19箇所・20公演のライブハウスツアーが控えていますが、楽しみでしょうがないのでは?

「はい。ライブツアーは僕ひとりでまわるつもりです。ダンサーもなしのひとり旅。つまり前回の大掛かりのホールツアーとはまったく異なった内容になります。実は、この前のホールツアーは全席ソールドアウトでした。普通ならさらに大きな舞台に進むのが定石ですが、ちょっと待てよ、と思ったんです」

――というのは?

「僕はAAAとしての活動もあるので、個人として1年にまわることができる公演数はこれまで10箇所程度が限度だったんですね。でもそうなると、行けない場所がたくさん出てくる。聴いてくれるファンが増えているのに、都会の大きな場所で集約してしまうと、ますます気軽にライブを体験できなくなるじゃないですか」

――なるほど。

「そうやって、ファンを横目にどんどん構築していくといつかはいびつなお城ができあがる。それはファンだけでなく僕のキャリアにとっても良くないと思ったんです。だから、なるべく多くの場所でいろいろな人に会いに行こう、って」

――北海道や青森、香川や熊本まで、これまで以上に様々な地域に行かれるのですね。

「さっき、部屋でひとりで曲を作っているだけで幸せ、って言いましたが、このツアーでは、その温度そのままを持っていきたいんです。ギター、ピアノ…いくつかの楽器を持って全国で“僕の部屋”を作って、音楽を届けにいくような感覚です」

――ちゃんと足場を固めてお城を作っていくと。

「そうですね。一足飛びで先に進むと、たぶん自分が自分のことを応援できなくなっちゃう。欲をいえば、毎年ホールツアー、ライブハウスツアーを1回ずつできたらいいんですけどね」

――これまでの日高さんのパフォーマンスや楽曲からは、つねに客目線を忘れない意識を感じます。

「ヒップホップってとかく独りよがりなイメージを持たれがちだけど、たとえばアメリカのラッパーで成功している人は、あくまでリップサービスとして演じているだけだと思います。逆にそれを真に受けて、表面だけをマネて本気で独りよがりに走る人はもれなく下降線を下っていく(笑)」

――(笑)。

「そう考えるとマイケル・ジャクソンって人はすごいですよね。一見、自己陶酔型に見えますけど、過剰なまでのパフォーマンスを何度も繰り返す力を持っている。冷静じゃない人が、毎回同じところで同じシャウトはできないですよ。自己陶酔タイプだと、同じことに飽きちゃいますからね」

――マイケル・ジャクソンのパフォームは計算の上で成り立っていると。

「と思います。それはとても尊敬するし、わざわざチケットを買ってくれるお客さんへの礼儀だとも思います。だからこそ、僕の場合も来てくれる人にできるだけ満足してほしいんです」

――カップリングには、ラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)の新エンディングテーマ『Welcome To The Dungeon』を収録していますね。

「僕も20代前半は多くのフリースタイルバトルに参加してきました。だから今のシーンの盛り上がりは単純にうれしいです。でも、今はその時間を曲作りに専念したい。ヒップホップが流行ろうと廃れようと、自分のやることは変わらないんです。ジャンルに対して帰属意識もありませんし。そういうのはZeebraさんのようにひとつのことを成し遂げた人が引っ張っていくべきで、僕はただいい音楽を作って、いいライブをするだけです」

――確かに日高さんのファンはジャンルがバラバラですね。

「ヒップホップが好きな人もいれば、AAAから僕を気に入ってくれる人もいる。意図的にいろいろな入口を作ろうと思ってやってきましたし。これからも特定のジャンルや現象・ブームには興味もないし、お客さんひとりひとりを見て、新しいエンターテインメントを作っていきたいです」

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