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座長・小籔千豊インタビュー! 吉本新喜劇にも高齢化問題の波が……

美魔女ブームに苦言、人見知りは“甘え”――。お笑い芸人・小籔千豊といえば「ノンストップ!」「バイキング」(フジテレビ系)などでコメンテーターとして知られ、様々なメディアで世論に一石を投じる存在として有名だ。しかし、小籔本人は「それは副業。あくまで本業は新喜劇です」と断言した。

そんな小籔が座長を務める東京公演の開催も今年で3回目。8月24日(水)~28日(日)まで、新宿・東京グローブ座で開催される「吉本新喜劇 小籔座長東京公演」には、並々ならぬ想いが込められているようだ。小籔はかつて漫才コンビ「ビリジアン」として活動し、2001年より吉本新喜劇に入団した。どん底の自身を浮上させた存在として、小籔は新喜劇に多大な恩を感じているという。

そこでEntame Plexは、あらためて「吉本新喜劇」の存在理由や問題点などの疑問を小籔にぶつけてみた。テレビで見せる辛口な顔とは違う真摯な表情の小籔は、その答えを丁寧に返してくれた。

――小籔さんは関東では、新喜劇の座長よりもテレビで「物申す人」なイメージが強いですよね。

「テレビもラジオも僕にとっては新喜劇の広報活動なんです。偉そうな言い方をするとあちらは副業、こちらが本業です。はい」

――だからこそ、自由に発言できる?

「普通の意見を出して好感度を上げる作業は僕のやることじゃない気がするんですよね。『なんじゃコイツ』って目立って、『ああ、新喜劇のヤツなんか』って東京の皆さんの脳に焼き付けてもらうことが目的でそうしたメディアに露出していますんで。僕がお金持ちになりたいからじゃないです」

――今回の東京公演における第2部のトークコーナーでの日替わりゲストは品川庄司、ウーマンラッシュアワー、渡辺直美、ピース、藤井隆など、名だたる面々ですね。

「新喜劇はお芝居が一番の魅力ですけど、新喜劇の楽屋でのアホみたいな話も面白い。僕が『(人志松本の)すべらない話』(フジテレビ系)でしゃべっているベテランのヘンな話も新喜劇を知っていただくひとつになったと思います。その珍エピソードって僕だけじゃなくて、楽屋にいるみんなが持ってるんですよ。全員ジジイババアと接してるんで」

――ジジイババア(笑)。

「僕よりも面白い話を持ってる座員もたくさんいるので、せっかくなら披露してもらおうと。その“すべらない話”をゲストに聞いてリアクションしてもらおうという企画です」

――東京公演の開催3度目を迎えますが、これまでどんな手応えを感じてきましたか?

「よく聞かれるのが『東京と大阪でお笑いは違いますか?』なんですが、僕はほとんど同じだと考えています。東京で生まれて結婚してから大阪に移住した人で新喜劇のファンという人もたくさんいますしね。だいたい生まれてきた子どもに東京も大阪もないでしょう。面白いことに地域性はない」

――なるほど。

「食べ物も音楽も変われへんのに、なんでお笑いだけそんな変わるの!? ってすごく思います。僕は浅草の(フランス座)東洋館もよく見に行きますし。笑うポイントにほとんど違いはないんじゃないですかね」

――観客の違いは?

「東京のお客さんのほうが優しいですね。昔から漫才をやっていてもそうですけど、心の純粋な人が多いなって(笑)」

――大阪は厳しい(笑)?

「たとえばものすごく味のいいぜんざいを初めて食べたら、地域関係なくみんな『おいしい!』って言いますよね。でも大阪の人はぜんざいを100回食べてるから、多少うまくてもびっくりせえへん」

――地域に笑いが根付いている分、敷居が高いと。

「最近はそうでもないですけど、昔の大阪ローカルってお笑いの番組ばっかりだったんですよ。その差は多少あるかもしれないですけどね。今でも大阪の人が東京に行って『え? あの番組やってへんの!?』って驚く人もいますよ」

――新喜劇の座員も地域によって認知度がずいぶん違いますよね。

「名古屋から東は全然知られていないですよね。最近、MXテレビでも放送しているので、少し風向きは変わってきましたけど。僕も昔は全然認知されてませんでしたからね」

――今では考えられない話です。

「まだ大阪が活動拠点で新喜劇が中心だったとき、ある番組で僕の知名度はどこまであるのかを調査したんです。京都では女子高生に囲まれて、名古屋ではオバちゃんの団体に『見てるで~!』って声をかけられて……それから富士山のふもとに行ったら…シーン」

――ははは。

「だーれも僕のところ寄ってこないんですよ。関東の人は誰も知らん。やっぱりそんな認識なんですよね。だから、今となっては多少名の知れた僕が新喜劇が根付いていないところに宣伝に行きたい。僕みたいなもんに先輩らが座長を譲ってくださっているわけで、それが可愛がってくれた先輩への恩返しにもなるかもしれないし」

――自身が中心となるとき、小籔さんはものすごく責任感が強くなりますよね。

「いや、それはね、違うんです。世間的になんとなくええかっこしいな評価になってますけど、それぐらいの責任は持って当たり前なくらい、みんなに良くしてもらったんですよ。もともと、僕はそんなキャラやないし」

――新喜劇に恩がありすぎる。

「僕、最初は漫才師やってたんですけど、相方がお笑い辞めて新喜劇入った当時、結婚もしたのにむちゃくちゃ貧乏だったんですよね。でも、ジジイババアにめっちゃいろいろ教えてもらって。それから、給料も人並みになって別のバイトも辞めることはできて、嫁さんも働かなくてよくなった。うちの子どもふたりは、はっきりいって新喜劇のカネで大きくなったようなもんですよ」

――その後、座長に抜擢された。

「はい。でもそのせいで池乃めだかさんやチャーリー浜さんとか、偉い人がいっぱいいるのに、あいさつしたり評価受けるのは僕で。でもそれってめっちゃセコない? っていたたまれんようになって。だから『コイツを座長にしてよかったな』と思ってもらえる動きは何だろうといつも思っています」

――東京公演はその動きのひとつということでしょうか?

「お中元にハムもらったら何かを返すでしょ? この公演もそういうことで、別に僕発信でやるわけじゃない。偉そうにしているわけでもない。ただ、これまでもらってきたいろんなもんを返しているだけです」

――おっしゃる通り、新喜劇は長い歴史の積み重ねのうえに成り立っているものだと思いますが、こうした伝統についてどう考えますか?

「若いときって、ひとりで生きているみたいな気持ちってあるじゃないですか。オレさえがんばっていれば別にエエねんや、って。すごく主観的にしか物事が見れない。でも、ひどい時期を脱出してようやく街で声をかけられ始めたときに、『これってオレの実力じゃなくて新喜劇という船が大きくて有名だからや』って感じたんです。僕の手柄なんか10%もない」

――謙虚ですね。

「いや本当のことなんで。いまのベテランさんや、すでに亡くなった先人が頑張ってきてくれたおかげで、僕がここに立っているんで。僕ね、若いころオリンピックとか見ていて『皆さんのおかげで金メダル取れました』って言葉、大嫌いやったんですよ。『何言っとんねん。お前の努力と才能やろ』って。でもいまは座長になってその気持ちがよく分かるというか。10年前の自分がいまの僕見たら指差して笑いますわ(笑)」

――(笑)。

「でもこれって全てにおいてそうで、先人たちが納めた税金で信号や道路が整備され、いろいろな発明があって小さなケータイで通話できているわけですよ。ワクチン注射だってほとんど人のカネで受けているのに、何イキって(いきがって)んねんと。みんなのおかげで大きなったくせに、何がひとりで生きてますやねんって」

――確かに。話を戻しますが、かつて新喜劇はスラップスティックや予定調和が、若い世代に敬遠される時期がありましたがこれについてどうお考えですか?

「伝統8割、革新2割で変わっていかなきゃいけないと思います。マンネリもいいんです。でも、僕はそう言われるのをやめさせたい。マンネリっていうのは目の前のお客さんは喜ぶんです。たとえばあるアーティストが10年来の定番曲をフェスで披露したらお客さんは喜びますよね? でもテレビでやったら『まだコイツ、この曲やっとんのかい』となじられる」

――そうですね。

「テレビと現場ってニーズが違うんですよね。僕らがNGK(なんばグランド花月)でやっている新喜劇はどちらのお客さんも相手にしなければいけない。新喜劇がマンネリ化と言われてしまうのは、目の前のお客さんばかり意識しすぎたためだと思うんです。現場の観客はやっぱり定番を見たい、それに応えた結果、テレビのお客さんは『もおエエって。何回やんねん』って思う人もいる。どちらの人たちもちゃんと考えることが新喜劇の成長につながるんじゃないかと」

――ほかに新喜劇の問題点はありますか。

「高齢化問題。桑原師匠は80歳、めだかさんは今年で73歳です。ベテランらが生きてるうちにどんどん若手を育成しなければと思います。もし僕に若返りの薬がいくつか手に入ったら、このベテランさんには、と思う人にすぐにでも渡したい」

――たとえば?

「『オレには渡せへんのかい!!』って話になるので明言は控えさせていただきます(笑)」

■吉本新喜劇 小籔座長東京公演2016
2016年8月24日(水)~28日(日)
東京グローブ座(〒169-0073 東京都新宿区百人町3−1−2)

【出演者】
小籔千豊、島田一の介、烏川耕一、清水けんじ、今別府直之、松浦真也、大島和久、新名徹郎、太田芳伸、清水啓之、祐代朗功、高橋靖子、宇都宮まき(休演日あり)、森田まりこ、金原早苗 他

【トークコーナー日替わりゲスト】
8月24日(水)品川庄司
8月25日(木)ウーマンラッシュアワー
8月26日(金)渡辺直美
8月27日(土)①ダイアン ②藤井隆 ③テンダラー
8月28日(日)①天竺鼠 ②矢野・兵動 ③ピース
※構成:吉本新喜劇(50分)+ゲストトーク(30分)

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