大事なのは音楽よりも人間性! 結成20年を迎えたセクアンが語るビジュアル系バンド論
今回は、今年結成20年を迎えたSEX-ANDROID(セクアン)にインタビュー!
インディ・ビジュアル系バンドとして、全身白尽くめの衣装のもと“医者ロック”をコンセプトに活動する彼らだが、20年にわたりどんな活動を行ってきたのか。この記念すべきに節目に全49曲入りという大ボリュームのベスト盤を出したセクアン、メンバーのYU-DAI、TφRU、JUNROに聞いてみました。
長きに渡り活動し続けるその秘訣は、意外にも音楽性以上に……。
——今年で結成20周年がたちましたが、この20年はいかがでした?
YU-DAI(以下Y)「(このバンドに)20年間ずっといるのは俺だけなんですけど……(この20年は)いろいろありましたね」
——メンバーの入れ替えも多かったですよね。その中でYU-DAIさんだけが一筋で。
Y「最初、JUNROさんもメンバーでしたけど一度辞めて。ただ、8年後に戻ってきましたけどね。20年っていうのは……実感ないっすね(笑)。でも、20年間音楽をやってる人は結構いると思うけど、同じバンドでやり続ける人はなかなかいないと思う。俺の場合はたまたまですけど、それができたことは良かったなって思いますね」
——TφRUさんは2001年に加入ですよね。
TφRU(以下T)「加入する前からセクアンのことは見ていて、当時からメンバーの入れ替わりが激しいバンドだなって思ってました(笑)。そんなバンドに加入して15年、まさかここまで長くいるとは思わなかったです(笑)」
——JUNROさんは初期メンバーでありながら、一度は外から見ることになったわけですが。
JUNRO(以下J)「抜けた後は違うバンドを組んでいたので、最初はあまり見てなかったんですけど、TφRUが入ってからはスゴいカッコいいなって思ってて」
——戻るときは、JUNROさんからお願いして戻ったんですか?
J「当時ベースがいなくなって、そのとき僕が偶然プラプラしてたんですよ」
Y「セクアンをやめた後、彼はTφRUとバンドやってて。それでTφRUがウチに来たら、JUNROさんも見学という口述でライブとかにも毎回来るようになって」
——それってファンみたいなものですよね。
Y「ただのファンでしたね(笑)。で、ベースがやめたきっかけで声をかけて。とにかくTφRUにくっついてきてたんですよ。一度は別れた恋人みたいな感じで(笑)」
J「一度はバラバラになりましたけど、みんな付き合いは常にあったんですよ。一緒にいると楽しかったし。TφRUがバンドをやめたころは、俺もやる気のない感じを出してたから“セクアンを選んだのか……”って思ってて」
T「別に険悪になるわけでもなく、あの頃はやる気がない人とバンドをやるのもなんなんで、別々に活動しようって思ってただけなんですけどね」
——でも、それから10年以上は今の形で活動しているわけで、これがベストだったんですね。
Y「もしかしたらもっと良い形もあるのかもしれませんけどね(笑)。でも、12年も続けられたってことはスゴいと思います」
——そもそもセクアン、SEX-ANDROIDですけど、正式名称はザ・クレイジードクター・セックスアンドロイド・ローリングスペシャルなんですよね?
Y「それは(横浜)銀蝿の一部をいただく感じで。最初に医者ロックとして白衣を着始めたころに、そういうのを付けた方がかっこいいかなと思って(笑)」
——その医者ロックなるコンセプトは1998年ごろからスタートしたわけですが、そもそもきっかけは?
Y「ちょうどリーダー(TφRU)とJUNROさんがやってたバンドのライブを見に行ったときに、全身黒尽くめの人が出てて。それを元に俺らは白でいこうと」
——白だから医者?
Y「医者というのはどうでもよかったんですよ。たまたま白衣が手に入っただけで(笑)。そのライブを見に行った日に決めて、それからまさかこんなに長い間医者ロックって言ってるとは思わなかった、正直(笑)」
——TφRUさんとJUNROさんは、医者ロックについてはどうですか?
T「特に抵抗はなかったですよ。僕自身、もともとメイクをするようなバンドをやってなかったんですけど、ビジュアル系に憧れはあったので」
J「僕も抵抗があるというよりは、むしろ白衣に鋲が付いていたり、ビジュアル系というよりはすごくパンキッシュでかっこいいなって思いましたね」
——今回、20周年を記念しベスト・アルバム「医者ROCK NEVER DIE」をリリースされましたが、昔の曲を今改めて聴いてみていかがですか?
T「僕らはライブで昔の曲をひんぱんにやってるので、特に違和感はないですね。今回の作品は、スペシャルボックスには49曲入り。なおかつ再録も3曲、新しく作ったミュージックビデオもあるので、ファンの方々には喜んでいただけてるようですね」
——特に思い入れのある楽曲は?
T「僕は初期の方の曲ですね。『ジェット・スターダスト・キャバレー』とか。そのころ(2006年)は、結構バンド的にもキツイ時期で。この曲と一緒にそれを乗り切った記憶があって」
Y「リーダーがあの曲を作ったからこそ今があるよね、思えば。もしあのとき違う感じの曲を作ってたら、えらいことになってたかもしれない。当時は、バンドの存続も危ぶまれるぐらい、精神的にも相当ヤバい感じで」
——20年やってるとそういうこともありますよね……。
Y「大変という意味では、前半の10年は特に大変だったけど、そのときはそれまで味わったことのないぐらいの大変さで」
T「ホント崖っぷちというか、これでダメだったら最後って感じでしたね。そんななか作った音源だったんですよ。今もまだまだ全然ですけど」
Y「2004年から今の事務所(ART POP)にお世話になってますけど、そのころNoGoDっていう後輩が現れて、これが俺らの起爆剤になったというか。後輩にまで抜かれた悔しさというか。それまではメトロノームとかもいて、俺たちは売れてなくて当たり前みたいな感覚があったんですけど、そこで変わったんですよ。俺らにとって2006年が1つのキーで、この曲はその節目というか、今思い出しただけで切なくなります」
——JUNROさんはどうですか?
J「俺は新譜が出るたびに、夜飲みながらヘビーローテーションで聴いてて、どれもいいなと。なので、全般ですね」
——ベスト盤のリリースとともに、現在はツアーも敢行中ですよね。
Y「今、半分ぐらい行きました。当初は“おめでとう”みたいなの期待してたんですけど……悲しいかな、これが全然で。最初の1〜2カ所はキテるなって感じがしたんですけどね、だんだんと……。まだ後半が残ってるのでそこで頑張りたいですね」
J「多少あるけどね、おめでとうムードも」
——今年は20周年ということですが、その後。今後はどんな活動を?
T「次の節目に向けてというよりは、僕らは今目の前にあるものをやっていくだけ。これまでも先々まで考えないでやってきたので、その考え方は今後も変わらないと思います」
Y「俺らが先々まで考えてたら、そもそもSEX-ANDROIDなんて名前も付けませんよね(笑)。でも、それだからここまで続いたんじゃないかなとも思います」
——ある種、勢いでやってきた?
Y「そうですね。あとは、これだけ付き合いも長くなると変な感じですし、何か新しいことをイチからやろうって感じもない」
J「僕もこれまで先のこととか一切考えてなかったんですけど、ただ歳とともに健康には気をつけるようになって。それ以外は何もないですね」
T「音楽的に大きく変化しようとは思ってないですけど、ただ徐々により幅広くしていければいいなとは思ってます」
——確かに今回のベスト盤を聴くと、音楽的な貪欲さ、ジャンルとか関係なくいろいろな方向にいってますよね。
T「個人的には、何か一環していればいいかなと思ってて」
Y「音楽性もそうですけど俺が思うに、やっぱりバンドは人間関係が重要ですよね。それがあって20年やれたかなって思うし」
——でも、バンドの解散とかって音楽性の違いで……とかありますよ。
Y「そうなんですけど、実はそれだけじゃないと思う」
J「少し前に、あるバンドが聴いたことない曲やってて、かっこいいなって思ったら、YU-DAIくんがこの曲売れそうだなって言ってて。TφRUもいいよねって言ってたんで、そういった感覚的なところは僕らあってるんですよね」
——それが長く続けられる理由でもあると。
T「そういったセンスは大事かもしれないですね、人間関係を築く上でも」
Y「それさえ合ってれば長く続けられる」
——バンドをやろうと思ってる人たちにとっては、人間関係が大事ということですね。まさに経験者は語るといった感じ。
Y「大事なのは、音楽よりも人間関係っすよ。やっぱりバンドありきですから。ただ、これでもっと売れてたらいいんですけどね(笑)。そしたら俺らから見てもすごくうらやましいバンドだと思います」
<関連サイト>
SEX-ANDROID http://www.artpop.org/sex-android/