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土屋アンナ「バカだと思われてもいい」、映画『GONIN サーガ』インタビューで本音に迫る


土屋アンナが、9月26日(土)より公開の映画『GONIN サーガ』に出演。この映画は、1995年公開の映画『GONIN』の正統続編にあたり、監督は前作に引き続き石井隆氏が担当する。その中で土屋は“5人”のひとりとして、バイオレンスな場に身を投じる。他の出演者には、東出昌大、桐谷健太、柄本佑、安藤政信、竹中直人、さらには俳優業を引退した根津甚八が一度限りの復活を果たすなど、個性的な面々が揃っている。今回エンタメプレックスは、土屋に『GONIN サーガ』についてや女優業にかける想いを聞いた。サービス精神旺盛の彼女のスタンスが生まれるルーツも明らかに……。

――まずは、映画『GONIN サーガ』への出演が決まったときの気持ちを聞かせてください。

「実は、流れをくむ元祖の『GONIN』を観ていなかったんですよ。お話をもらって初めて観たとき、スタートの暗い場面をカット割りなしで撮るシーンが衝撃的で。今だと展開の速いものも多いと思うんですが、まるで自分がその場にいるような錯覚に陥ってしまいました」

――石井隆監督らしい手法ですね。

「その後、バイオレンスでリアリティがある展開が続き、女性だと目を伏せてしまうようなシーンもあるんだけど、甘ったるくなくガッツリ見せていく監督だと感じていました。初めてお会いするまでは、『すんごい怖い人なのかな』って思っていて。実際は真逆だったんですけど(笑)」

――意外と優しかったと。

「私は、どちらかというと演技をしっかりと習ってきたわけではなく、感情的な存在として(演者として)呼ばれることが多いな、と自分では思うんです。だから、オファーを受けたとき『なるほどな』と感じたんです。リアリティを求められているんだって」

――なるほど。

「私が『こんな私で良ければやらしてください!』って言ったら、監督はやさしく『うん、お願い。やってくれるとうれしいんだ』って。これまで出演した映画は“お話”だったんですが、この映画は、現実にある非日常性をそのまま撮りました、というリアルさがあったので、私はとてもやりやすく、すんなりと役に入ることができました」

――現場ではあまり監督が指示を出さなかったそうですね。それは現場に入る前に監督が各役者とディスカッションをして、その反応から指示の必要がないと判断したからのようですが、その際アンナさんは監督とどのようなお話を?

「私が『この役ってこうなんですかね?』って聞くと、監督は『何も考えなくていい』っておっしゃいました。私って考えると固くなって空回りしちゃうタイプなんですよ。それをわかってくださったんだと思います。現場で印象的だったのが、『これだとやり過ぎですかね?』ってたずねると、監督は『でも君はそういう動きをするんでしょ? 面白いよね、だからいいと思う』っておっしゃっていて」

――自分の想像と違っていても、それもアリだと。

「監督の器がすごく大きいっていうのはもちろんですが、良い意味でやわらかい方で。演者すべての突発的な行動、つまり演技していないリアリティをものすごく欲しがってくれている人です。例えば(共演者の)安藤くんが入り込みすぎて、イスから転げ落ちるハプニングがあってもカメラを止めないんですよ。それが監督の求めているものなんだなって思いましたね」

――徹底したリアリズムを求める。
「でも、メイクさんとかは『ぎゃー!』って言っていましたけどね(笑)。水に濡れるシーンを何度も撮り直すとか。そういった部分にはしっかりと時間をかけていました。メイクさん泣かせ、とか言ってましたけど、みんなもそれを楽しんでました。『うわー濡れたー、血が出たー! やり直しになるなよー……やり直すんだ~』って(笑)」

――アンナさん自身、女優業についてのスタンスはどう捉えていますか?

「しっかりと演技の勉強をして演技する人や、深い人生を歩んで色々な引き出しをコントロールして出せる人とか、竹中(直人)さんのような天才肌もいるし。役者って本当にすごいと思うんです。でも、私はまだどこにも当てはまってないので胸を張って『自分は女優です』って言えないんですよね(笑)。たぶん死ぬまで言えないんですけど」

――今作では素晴らしい演技でしたが。

「皆さん演技一本じゃないですか。私は音楽もモデルもやっていたりしてるので、それを口にすると彼らに失礼になるのかなって一歩下がっています。でも、今回のように『なりきる』というか、ある人の人生を自分とマッチさせて演技するのは好きなんですよ」

――謙虚ですね。

「でも、素の自分と全然違う役のオファーを受けたら、全然できないと思う(笑)。真面目な生徒とか」

――(笑)。でも石井克人監督の映画『茶の味』では真面目な生徒役じゃなかったでしたっけ?

「あはは(笑)! だから、あのときはあまり喋らないようにしたんです。悪役とかはすごくやりたいんですけど。とはいえ、いつか誰かが『お姫さま役をくれるはず』と思って(笑)。それを待ち望んでるんですよ」

――アンナさんは、どんなことでも気を使ってサービス精神が旺盛なイメージがあります。

「私ね、バカだと思われてもいいんですよ。皆さんが笑ってくれれば。カタいのも好きじゃないし、無言な空気も苦手で。まわりが『ああ、面白かったね』と思ってくれる場をつくることがやりたいんですよ。竹中さんもそういった部分があると思うんです。あとで尋ねると、『何言ったか覚えてないよ』なんて言うんですけど、絶対覚えているんですよ(笑)」

――竹中さんはそうやってとぼけるイメージがありますね(笑)。

「どこでも一緒ですよ。飲み屋でも、おばあちゃん家に行っても。ただ毎日楽しいほうが良くない? ってだけで。真面目な人がいるから成り立つ話ですけど、だからこそ私はそっちじゃない方でいたいです。でも、あとで母親やおばあちゃんには怒られますけどね。『何? あのしゃべりかた! またとんでもないこと言って』って(笑)」

映画『GONINサーガ』は、TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開中!

©2015『GONINサーガ』製作委員会

ヘアメイク:“baku”(Les Doigts)
スタイリスト:YAMATO(Rising Sun)

<関連サイト>
映画『GONIN サーガ』 http://gonin-saga.jp/
土屋アンナ http://anna-t.com/
東出昌大が涙した俳優・根津甚八の手紙「演じることは生きることそのもの」 https://www.entameplex.com/archives/24278