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直木賞作家・西加奈子、切なすぎる“恋わずらい”を書き下ろし! ショートストーリー「あなたのからだ」をWeb限定公開


004年に「あおい」でデビューし、2015年には「サラバ!」で、第152回直木三十五賞を受賞した作家の西加奈子書き下ろしによるショートストーリー『あなたのからだ』が、6月28日よりWeb限定で公開された。

本動画は、“いい恋って、なんだろう。”をコンセプトに、軽井沢高原教会に寄せて書き下ろした作品となっており、“病という冠がついているけれど、恋わずらいはきっと、未来のある病だ。”といった表現など普段の小説とは異なるもうひとつの西加奈子ワールドを楽しめる内容となっている。

また、今回公開となった本ムービーの「いい恋って、なんだろう。」をテーマに行った特別インタビューも紹介!

――西さんは、どのような20代を過ごしてきたのでしょうか?

「20代は、“女の子であること”に囚われていたなと思います。20代のうちに結構本が売れたんですが、それを恥じなきゃいけなかったというか……。『若い女が、こんな大金持っとたらアカン!』みたいな社会圧を、勝手に感じていたんです。やっぱり、モテたかったの(笑)。『おまえの彼女、ええな』って言われる女の子でありたかった。作家という特殊な職業じゃなくても、認められたいと思っていたんです。だから当時は、作家であることを隠していました」

――西さんが憧れる恋愛とは、どのようなものなのでしょうか?

「よく、成長しあえる恋愛がいい恋愛なんていうけれど、私は、どんどん世界を狭くしてくれる恋愛に尊さを感じていて。田舎で暮らす夫婦が登場する『きいろいゾウ』は、そんな関係性に憧れて書いた物語です。また『ふくわらい』では、恋ってものがわからない主人公と、目の見えない男の人が、“世間でいう恋愛”のようなものをはじめるかもしれない……というシーンがあります。それが、すごく印象に残っていますね。ゼロからふたりの関係性を築くことに、すごく憧れるんです。例えば私は、必要なかったから結婚指輪を買ってないんです。でも、じっくり考えて『絶対に指輪が必要!』っていうのも素敵だと思う。答えはどうあれ、『こういうもんやから』を一旦取り去って考えたいんです。そのためには、自分とパートナーを愛して、心の声に耳を澄ませることが大切。自由って、そこからはじまるような気がします。だって、本当に好きなもの・したいことがわかっていたら、人と比べなくなるでしょ?」

――恋にひたれる時期に、どんな恋愛をしておくとよいでしょうか?

「思いっきり恋愛にかまけていいと思うし、私は、そうしておいてよかったですね。恋愛話で飲み明かせるうちに、手痛い目にあっておいたほうがいいとも思います。だって、『それ、ヒドイな―』って友だちと言い合いながら飲んだ酒は、おいしかったしね(笑)。『死んじゃうかも』と思うほど人を好きになるのは自分のカラダを100%、誰かに明け渡すこと。それはすごく優しい行為だし、奇跡に近いこと。だから、手痛い失恋だって『その人が選んだ恋』というだけで、尊いものだと思います。誰かを傷つけていない限りは。そういう経験があるかないかで、違う気がするんですよね。なにが違うのかは、もっと年齢を重ねたときに分かってくるのだと思うけれど、今の私にも『どんな恋愛も糧になった』という意識だけはあって。そう、どんな恋愛も糧になる。絶対に。絶対に、です」

<関連サイト>
教会からのメッセージ|軽井沢高原教会
https://www.karuizawachurch.org/message