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家入レオ、本来の自分の姿をありのままに表現した意欲作『WE』について語る


“やっと自分らしく呼吸ができるようになった”
新作『WE』について、家入レオはそう話してくれた。
今年に入り『Hello To The World』、そして『僕たちの未来』と立て続けにリリースしたシングルで、これまでとはまたひと味違う姿を見せ、そして今その集大成となるアルバム『WE』(7月6日発売)を発表。それはまさに彼女がようやく辿り着くことができた家入レオの新しくも本当の姿。様々な思いが詰め込まれた本作に関して、その思いの丈を語ってくれた。

――まずはアルバムを作り終えた率直な感想は?

「すごく楽になりましたね」

――今年の初めにシングル『Hello To The World』をリリースしたときも“どこか吹っ切れた”って言っていましたけど、そこに通じるもがある?

「あの曲があって、私の転機にもなった『僕たちの未来』があって、そこで自信がついたんです。そして、その後でこの『WE』というアルバムが作れたことがすごく大きいですね」

――ブログでは新たな始まりとなる作品とコメントしていましたね。

「これは東京でのファーストアルバムって感じなんですよ。これまでも東京で活動していましたけど、今回は東京での日常をすごく落とし込めた感じがしていて」

――1曲1曲のタイトルを見ているとすごくポジティブな言葉が多い。それだけでも大きな変化かなと。

「それは自然にそうなっていったというか……人間って誰しも陰と陽を持ってると思うんです。でも、私の場合はこれまですごく陰にスポットがあたりがちで……もちろんそれも自分の大事な部分で、むしろそこに嘘を付かずにやってきたことを誇ってるんですけど、友達とパンケーキとか食べに行くんですよって言っただけで驚きの声があがったときにこれはどうかなと思って(笑)」

――それは人間的な部分で?

「あまりにもパーソナルな部分が見えないというか、私は私のことを歌で表現しないと説得力に欠けるなって思ったんです。それで今回は『Party Girl』のような曲もできたんですけど、自分はこういうところもあるんだって歌で言えたことですごく楽になったんですよ。陰と陽、両方あっての「私」、作品としてそれが初めて言えた気がします」

――今作はすごくバラエティ豊かな作品になっていますが、その中で印象的だったのがタイトル曲でもある『we』。シンプルなんだけど、ここにすごく思いが集約されているのかなと。

「そうですね。私はデビュー以来……人間はひとりだって思ってて。それはポジティブな意味で。もし体に2つの魂を宿る世界だったら、本当の意味での孤独を知らないから愛を求めずに生きることになる。それって人の温かさを知らずに生きていくことと同じで、だからこそ孤独は神様からの最高のプレゼントなんだって思うんです。ひとりだからこそ誰かを好きになったり、愛したりするわけで。まわりのスタッフから“人はひとりじゃないよ”って言われても、それはきれいごとなんじゃないかって思っちゃって。ただ、今回アルバムを作っているときになぜかその言葉が浮かんできたんですよ。私は音楽に救われた人間で、おこがましい話ですけど今もしかしたら逆に誰かを救える立場にいるかもしれない。私の音楽が最後の砦になっているのかもしれない。もし、そこで“人はひとりだよ”って歌ってたら、本当に世の中に救いがなくなってしまうんじゃないか。だからこそ、私は大丈夫じゃなくても大丈夫って言ってあげる存在になりたい。本当に無理だと思っていても前向きになりなさいと言われれば、人はそっちに引っ張られることもあると思うんです。そういう意味でこの『we』ができたんです。ファーストアルバムの『LEO』みたいに私のことをわかってっていうスタンスから、嫌われてもいい、受け取らなくてもいい、ただ私はボートを湖に浮かべ続けるから気に入ったら手に取ってねっていうスタンスになった。それがすごく現れているかなと思います。それは、やっと自分らしく呼吸ができるようになったというか」

――呼吸? それは生きること?

「そうですね。でも、今までの作品があっての1枚なので全部無駄じゃなかったし、全部に感謝してるからこそこの作品ができたんだと思います」

――今回はこの『we』と、対照的な『Party Girl』は家入さんが作詞作曲。このギャップも面白いですね、それこそ陰と陽という感じで。

「思いは同じなんですけどね。私は昔から感情の起伏が激しくて、それがコンプレックスだったんですけど、昔から一緒にライブを作っている舞台監督さんに“それはレオちゃんの魅力だから”って言われて、こういう自分でいいんだって思えるようになったんです。私生活で『Party Girl』的なことはたまにしていて、それは確実に私の一部分でもあるので、今回はそれを曲に落とし込めてよかったです」

――起伏という意味ではアルバムの中にもすごくあって、特に前半はすごく明るいけどそれはなぜ?

「冒頭の3曲は意思表示なんです。最近よくインディーズのバンドの音を聴くことが多くて、前にThe fin.のライブに行ったときに正直ショックを受けたんですよ。年齢もあまり変わらないのにすごく完成されていて、こんなにかっこいいことやっちゃうんだって。それで、あからさまに落ち込んでいたときにプロデューサーの多保さんから“自分の生き方を突き詰めるやり方も大事でかっこいいけど、エッジの効いたことをしながら多くの人に求められる方が意外と難しいんだよ”って言われて。そこで私はJポップでやることを難しく考えるのをやめようと思ったんです。私はこの場所でデビューして、ここでいろいろな人と出会い、これからも出会っていきたいし、それをマイナスに考えちゃダメだって。そのときにこの3曲は大きいタイアップが付いていて、あえてそれらを最初に持ってきた。それが私の意思表示でもあったんです」

――あと、意外性という意味では『Party Girl』もですが『シティボーイなアイツ』も。今までにないニューウェーブ感というか80’s感があって、いよいよこういったサウンドも打ち出すようになったんだって。

「私はいつ聴いても色褪せない音楽、名曲が大好きで、私自身そういう音を作りたいと思っていたんですけど、2016年に音を鳴らしているんだから今のエッセンスをたくさん取り入れた曲を作っていきたいと思っていて。それだけにこの曲はPOP ETCという海外のバンドのボーカル、クリストファー・チュウにアレンジをお願いして、彼が作るニューウェイブっぽい仕上がりになっているんです。今回自分の中でひとつのテーマとして“スタイリッシュ”があったんですが、それがいい感じに組み込めたんじゃないかなと思います」

――そういったコラボもこれまでなかった試みですね。

「それこそ『Party Girl』もクラブ系のユニット80kidzが参加してますしね」

――それもこれまでの家入さんからは想像できないんですが、音楽に対してより貪欲になった?

「21歳で一緒にやりたい人とやらせてもらっている環境にいることはすごく恵まれていることだと思うんです。それだったらもっと窓口を広げて、いろいろな人からエッセンスを吸い取った方が自分のためにもなるし、作品も面白くなるし最高じゃんって思うようになったんです。たとえコラボするにしても自分というものをしっかり持っていれば、そこに流されることもないですし」

――ステップアップしたわけですね。

「めちゃめちゃ泣きましたけどね(笑)。何度も悔しいと思ったし、半年でこれだけの曲を作るのも大変でしたけど、音に対してすごく自由になれて、楽しかったんです。それも価値ある楽しさというか、まわりのスタッフさんにも恵まれてみんなが私を息の長いアーティストになれるよう育ててくれているのがすごくわかって、自分もそれに応えようと頑張れたし……それは素晴らしい時間でしたね」

――休みは全然なかったようだけど苦にならなかった?

「ホントになかったんですよ! ありがたいことなんですけど……本音を言えば休みも欲しかった(笑)。ただ、引っ張られるんですよね。スタッフ含めみんなが頑張ってるから、私もここでくじけるわけにはいかないなって。そこで、本当に私はひとりじゃないんだって改めて思いました」

――制作が楽しくなってくると、次へ次へとなるんじゃないですか?

「やりたいことはかなりあります。もっといろいろなアーティストとコラボもしたいですし。それこそ今見たもの、聴いたもの、触れたものが全部自分の音になっている感じがしていて。結局10代はどこか後悔していたんですよね」

――後悔?

「そう、音楽以外ほとんど何もしてなくて。そのとき頑張ったから今があるんですけど、もっといろいろなところに行って、いろいろなことに触れればよかったなっていう思いもあるんです。だから、20代はいろいろな経験をしてどんどん面白い曲を作っていきたいと思ってます」

――以前と比べて聴く曲とかも変わりました?

「変わりましたね。いろいろ聴くようになりましたね。インディーズはもちろん、それこそEDM系も。例えばZEDDとか」

――それもまた意外。

「(笑)。実は今回のマスタリングの参考にしたのは、ZEDDだったりしますし(笑)」


――そうやっていろいろな音楽を聴くことで得るものがあるわけですね。

「たくさんありますね。逆に同じようなジャンルの人からエッセンスをもらっても変わらないというか。安心して聴けるかもしれないけど、今はそういうスタンスじゃないんですよ。私とは違うところからいろいろと持ってきて、みんなに驚きを与えながら上がっていきたいですね」

Photo by 竹内洋平

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