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“噛まれたら、みんなヤクザ”話題の新作「極道大戦争」三池崇史×市原隼人 対談


“全ての映画が過去になってしまうような、新たなジャンルなんじゃないかって思った”

市原隼人がそう語るのは6月20日(土)より公開の映画「極道大戦争」。

今作は市原が主演、そして監督は鬼才:三池崇史。そんな両者が贈る“極道”“大戦争”となるととんでもない作品が……と思う人も多いと思うが、とんでもないのベクトルが異次元方向へと向けられた、まさしく新機軸的仕上がりに。
三池×市原、約7年ぶりとなる今作。“噛まれたら、みんなヤクザ”という荒唐無稽な物語の中で感じたことやお互いのこと、そして今作の魅力について2人が語ってくれた。

――市原さんと三池監督、ご一緒するのは約7年ぶりとなりますが、お互い何か変化はありました?

三池崇史(以下、三池)「尖っているところは相変わらず、それがより細くではなく、太くなりましたね。しかも、その角度は変わらず鋭角で。でも、何か覚悟を決めたんだなって感じもして。それは役者としてだけでなく」

――人間的な部分で?
三池「少し前にやっていた舞台(最後のサムライ)とかを見ても、それは感じたんですよね。何かをしっかり持って生きていくというか。役者というのは仕事がないと役者じゃない、そしてあまり気が乗らないものでもやらなくちゃいけない。いろいろな要素があって、非常にワイルドな生き方だと思うんです。でも、だからこそごく一部の、特別な魅力を持った人間たちだけが生きていけるし、一方で何かを諦めなければならない部分もあると思うんです。それを全く諦めない、自分らしく生きるのが市原隼人。それは7年前からそうでしたけど……」

――それがより太くなったわけですね。
三池「俺は巻かれねー、みたい感じがね(笑)。でも、そういうところがかっこいいと思う。相変わらずな感じで、これからもずっとそうなんだろうなって思いますね」

――市原さんはいかがです?

市原隼人(以下、市原)「三池さんのことはひとつの現場ではわからないというか、たとえ同じ作品を作るにしても、一度すべてをぶち壊し、また違う方向からそれを作りあげる思考を持った人なのかなって思うんです。でも、そこには三池監督という、常にブレない軸があって、現場にいる人もみんな職人気質で。それは以前からすごく感じていて、現場では三池さんに生半可なものを見せたくないっていう空気感がすごく出ているんですよ。やらされているっていう状況ではなく、ましてやお金のためでもなく、みんな職人として看板を背負って現場に立っている。そういう人たちに会える三池組っていうのがだんだんわかってきて、これはスゴいことなんだなって思って。みんな自由にそれぞれそっぽ向いて好きなことをやってるようにも見えるんですけど、最後にはみんな絶対的な三池監督に向いているんですよ。そのために、みんな一度違う方向を向いて考えて、全てを投げかけていくのがこの現場。みんな本当に職人という言葉が似合う人ばかりです」

――市原さんはそんな現場が大好きなわけですね。
市原「大好きですね」

――今作は、良い意味でとんでもない作品に仕上がっていると思いますが、完成した作品をご覧になっていかがでした?
市原「これから出るであろう作品も、過去の作品も含めて、全ての映画が過去になってしまうような、新たなジャンルなんじゃないかって思いましたね」

三池「見る側よりも我々作る側の目に見えないもやもやとしたものに向かって全力で投げたという、ある種の快感があって。でも、本当はそれがエンターテインメントに必要なものなんじゃないかっていう感覚もある。なかなか今闇に向かって投げる人は歓迎されないんですけどね(笑)」

市原「カエルやカッパも出てくる、でもやってることはすごく繊細な感情と大胆なところ、大きな振り幅があって、いろいろな角度から見れるすごい映画ですね。お客さんの見方も、それ相応に様々な作品だと思います」

――今回のストーリーの着想のきっかけは?
三池「珍しいとは思いますけど、飲み屋の無駄話。酔った勢いで噛まれたらヤクザになるって最悪だよね、映画として……みたいな(笑)。いまがこういう状況だからとか、何かに逆らうとか、そういう子供っぽさもないところから生まれてきて。そして、それが偶然にも『マッドマックス』の新作と同時公開(笑)。個人的には運命を感じますね。あの作品もオーストラリアから世界ではなく、自分の中に思い切り投げつけた作品だと思うので」

――市原さんは主人公:影山について、どんなイメージを持って撮影に挑んだのでしょうか?
市原「最初は想像できなかったですね。三池さんには、影山はまっすぐ、変なことをしなくていいと言われた気がするので、(リリー・フランキー演じる)組のオヤジに対しての大義だけはぶらさずにいました。あとは、まわりが濃いキャラクターばかりなので、彼らとどんな絡みができるか、そして影山もただまっすぐじゃつまらないので、いろいろなキャラクターをつついていけたらいいなって」

三池「影山というのは自分の理想というか、正反対にいるもので、やっぱり主人公には自分にはできない、そう思えないものがいいんですよ。俺がもしあの場所にいたらまず逃げますし(笑)」

――そこで影山は逃げることなく戦うわけですが、市原さんならどうします?
市原「ヤクザの芝居して、彼らのスパイをしますね(笑)」

――あえて噛まれるのもアリかと思いますが。

市原「そうなると、感情すべてなくなっちゃうじゃないですか。僕は人間の感情のまま、ヤクザを見てみたい。彼らはどんな生活をしているのか、それを見るのは楽しそうだし。僕は単純に好奇心旺盛で、昔から秘密基地を作るのも好きで、今もそういう感覚なんですよ、現場で。僕は芝居で会話がしたいし、現場で遊んでいたいんです。子供が積み木を重ねる気分というか、単純な気持ちでいたいんですよね。だから潜入してみたい(笑)」

――そんな市原さんの話を聞いても、やはり監督は逃げる一択?

三池「俺は逃げるのは得意なんですよ(笑)。でも、逃げている結果映画を作っているというところもあるんですよね。いまさら振り返って正面で受け止めるよりも逃げる。何かに背を向けるってマイナスに思えるけど、そこで向いている方向はそれまでと違う未知の世界ですからね。そこからどこへでも行けるんです。逃げていたものに一度ぐらいはぶつからなきゃっていう思いもありつつ、きっとそこで誰か、何かを探しているんだろうなって思います。それは才能や自分の武器になるものとかね」

――背を向けているからこそ見える景色もあるわけですね。
三池「そう。そして、俺は逃げる人、彼は逃げない人。そのバランスはいいかもしれないですね(笑)」

「極道大戦争」は、6月20 日(土) TOHOシネマズ 新宿ほかにて全国ロードショー。

© 2015「極道大戦争」製作委員会

<関連サイト>
「極道大戦争」 http://www.gokudo-movie.com
市原隼人主演×三池崇史監督作『極道大戦争』がカンヌ映画祭の監督週間に正式招待 https://www.entameplex.com/archives/20156