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auじぶん銀行社長×元日銀副総裁、今後の日本経済は?


11月25日、日本経済と金融の“これまで”と“これから”、さらには銀行の未来を考えるべく、auじぶん銀行・臼井朋貴社長と元日銀副総裁・西村淸彦氏による特別対談が実施された。

まずは、日本経済を長年研究し、金融業界で幅広い活動実績と知見を持つ西村氏が日本経済の“これまで”について言及。日本経済はバブル崩壊後、長く深い景気後退・金融危機に直面。1990年代から2000年代にかけてのその困難な時期に産業技術の革新、IT化が進む中で構造転換を迫られたとか。そして、さらなる成長のためには2つの選択肢があり、1つは革新的な「新市場を創出し、新しい付加価値を作り出す道」。もうひとつは保守的な「生産の絶え間ない効率化・費用削減」。

日本は元来、新市場創出と生産効率化、双方長けていただけに、本来は二正面で戦えたものの「残念ながら金融危機以来、日本はリスク回避の傾向が強まり、現状維持の守りの姿勢に」と悔やむ西村氏。そして、インターネットを通じたオープン化、連携の強化など世界の潮流に乗り遅れ、長引く消費不況の中、革新的な商品やサービス全て海外からの輸入品へと移行。これは今なお続いているだけに「効率化も重要だが、今は新しい価値を創造する仕組みが求められている」と西村氏は危惧。

そうした効率化が進む中で日本のインターネット銀行は胎動し、auじぶん銀行は2008年に設立。生活に浸透し始めたスマホに特化してサービスを展開するという志のもと、「“手のひらの銀行”をコンセプトに、ネットだけで完結することは従来なかったが新しい形を生み出せた」と臼井社長は来歴を語る。

そして現在の日本経済について、西村氏は「課題は山積」と憂慮し、中でも問題は「高齢者のICTスキルの低さ」と指摘。さらに気がかりなのは「お金に対する意識の欠如」。とりわけ“投資”への意識は欧米に比べ格段に低く、金融知識の乏しさを懸念。これは臼井社長も同じで日本人の金融知識に対する学びの機会の少なさを悲嘆。

それだけに、auじぶん銀行では金融教育に取り組み、大人向けの資産運用セミナーやアスリートのセカンドキャリア支援を実施。そして、臼井社長が「一番大事なこと」と重要視するのが子どもへの金融教育。「今はほぼないので、子どもの頃から金融に関する正しい知識を身につける機会を提供したい」とアニメーション動画を作成したり、小学校を訪問しお金の授業を行っているとか。

西村氏はそうした活動を高く評価しつつ、「投資を手助けする仕組み、つまり金融教育により誰もが新しい金融サービスの恩恵を受けられるようにすることが必要」と主張。若者への教育に加え、高齢者のICTスキル教育、金融知識の再教育を含めau じぶん銀行の活動に期待を寄せる。それに対し、au じぶん銀行としても「スマホアプリの使い勝手を追求し、誰でも簡単に操作できるようなものに」、さらには「金融教育だけでなくSDGsにも注力したい」と臼井社長は意欲的に語る。

そんなau じぶん銀行のさらなる飛躍を願い、西村氏は3つの提言を披露。それは、「ライフステージによって必要な投資情報・意識の違いを考慮しているか」、「十分な情報がわかりやすく伝わっているか」、さらには今まで金融業界では考えられていなかった「投資家の新しい“気づき”、投資家のSDGs目線の引き上げ」。「資産形成にとどまらず将来自分が何をしたいのかを考えることが重要であり、資産を使って世界に貢献できることがあれば生き方が変わる。そして、投資によって人を傷つけることがないようにして欲しい。それが投資家としてのSDGsの基本」と言い、これらが実現すれば素晴らしいシナジーが生まれると明言。

また、投資も多様化する中で「それぞれのユーザーにフィットする商品を作っていくことが必要」と西村氏は述べ、「投資に対して“抵抗”ではなく“納得感”を与えることが大切」と指摘。「安心・安全・確実」の時代から「安心・安全・納得」へ。西村氏は「納得することで不安も減少する。これを新しい判断基準に」と提唱する。

そして、今後についてはデジタル化が加速し、暗号資産のような新しいシステムも生まれているだけに「20年後には今のような銀行は消えているのではないか」と西村氏。とはいえ、ただ消えるのではなく、多様な事業者とのアライアンスによって新たな市場の開拓、革新的なサービスの提供の期待し、この20年できなかった効率化と付加価値の二正面作戦を「今後の20年は押し進めていかなければいけない」と切望。その上で「その視点の転換によって日本経済を作り直すことに繋がる」とも。

臼井社長も「KDDIや三菱UFJ銀行などグループの中でも存在感を出し、10年後、20年後に我々がグループを牽引する企業に成長していくために、お客様目線に立ち、今までの発想にとらわれない商品・サービスを展開していかなければならない」と力説。さらには「事業者ではなく、お客様がサービスを選ぶ時代。我々も銀行のみでなく、グループ一体となってサービスを提供していきたい」と抱負を述べ、「ブランドスローガン“銀行を連れて、生きていこう。”を体現し、お客様に選び続けられる銀行であり続けたい」と力強く語っていた。

<関連サイト>
auじぶん銀行
https://www.jibunbank.co.jp/