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学生が「住まい方×エネルギー」のビジネスモデルを提案


イノベーション(変革)を「エネルギー」という視点で読み解くことで未来を考えてゆくメディア「EMIRA」は12日、早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(以下、PEP)とともに、ビジネスアイデアコンテスト「EMIRAビジコン2022 エネルギー・インカレ」をオンラインにて実施した。この記事では、今回で3度目となるコンテストの当日の様子を紹介。

本コンテストは、EMIRAと、早稲田大学を代表校に13大学が連携する5年一貫の博士人材育成プログラムであるPEPが共催。今回は、「住まい方×エネルギー」というテーマにて、ビジネスアイデアを全国の大学生・大学院生から募り、145チームの頂点が決定した。

最優秀賞を受賞したのは、「生ゴミの水切り促進アプリ」について発表したLivLoopチーム。最優秀賞を受賞したアイデアに対して、審査員である早稲田大学理工学術院 田辺新一教授は、「生ごみの水切りに着目し、廃棄物発電の負担軽減に繋げるという着眼点が良かった。さらに、収益の少なさをゲーム型のアイデアを取り入れて解消し、より普及するように工夫したことが高く評価された」と語った。

また、KADOKAWA賞は赤松・大池チームの「農耕×テレワーク 省エネルギーな住まい方の創出」、TEPCO賞はNO2チームの「個人向け排出権取引サービス i-ETS」、優秀賞は椙山女学園大学現代マネジメント学部チームの「スモールハウスによるコンパクトシティ実現」と、Y-Laboチームの「省エネテクノロジーレンタルサービス」が受賞した。

なお、コンテスト終了後、EMIRA最優秀賞を受賞したLivLoopチーム、および審査員である早稲田大学理工学術院 教授 田辺新一氏と東京電力エナジーパートナー株式会社 高橋徹氏にインタビューを実施した。

<「EMIRA最優秀賞・LivLoop」インタビュー>

――最優秀賞を受賞した、今の率直な感想を聞かせてください。

発表する前から最優秀賞を受賞できる自信があったくらい、チーム一丸となっていいものを作ってきたつもりでした。思った通りの結果が出て、本当に良かったと思っています。

――発表のテーマである、「廃棄物発電を活性化させる生ゴミの水切り促進アプリ」という内容に着目したきっかけは何ですか?

今回のビジコンのテーマが「住まい方×エネルギー」だったので、みんなでアイデアを出し合ったところ「家庭ゴミの分類」に辿り着きました。自粛期間が増えたことで家庭ゴミが増えたことも共通した課題として挙がっていたので、そこから掘り下げた結果、「生ゴミ」に着目することに。問題はそこにどうやってエネルギーを絡めるか、というところでした。海外の事例も分析し、インドネシアでスマートソートという概念が生まれていたこともあり、参考にしながら考案しました。

――実際にこの事業を進めていくとしたら、課題はどのようなことになると思いますか?

廃棄物発電所を運営しているのが自治体なのですが、そこまで財政に余裕がないので、民間に比べると事業として契約を結ぶハードルが高いなというのが一番感じている課題です。もう一つは、還元額が自治体との契約数に依存してしまうので、自治体と連携が取れないと還元額も低くなってしまう。そうなるとアプリが成り立たなくなってしまうので、いかにスタートダッシュで自治体に魅力を伝え、多くの契約を獲得できるのかというところも課題だと感じています。

――コロナ禍で、今回の発表の準備や日々の研究を行っていると思います。苦労している点など実情を教えてください。

ミーティングは基本的にオンラインで行なっていたのですが、オンラインだと時間の都合が合わせられるメリットの一方、画面越しであることで認識の齟齬が生まれてしまうこともありました。気が付かないうちに思ってもいない方向に話が進んでしまうこともあり、そういう点ではオンラインでアイデアを詰めていく難しさは感じました。

――この研究の今後について、どのようにお考えですか?

今のところ明確な予定は決まっていませんが、まずは、このアイデアを考える上でいくつかの発電所や自治体にヒアリングを行なって、色々なことを教えていただいたので、こういう結果になったことを報告したいと思っています。もしそこで話の進展があれば、チームで再考し発展させていければと思います。

<審査員 早稲田大学理工学術院 田辺新一教授インタビュー>

――5組のアイデアについてどのように感じましたか?

普段の研究や論文とは違って、制約なく考えるということが重要かと思います。そのことで世の中が変化し、ビジネスになる、という点もすごく重要です。レベルがすごく高くて、質疑応答では審査員側が難しい質問をすることもありましたが、みなさん明るく真面目に答えているなと思いました。5つともそれぞれすごくよかったです。

――学生のアイデアから感じたことや、印象を率直にお答えください。

現実の会社では、何か提案するとすぐにダメ出しがきてしまうのですが、学生の皆さんは明るく受け答えしていてとても良かったです。批判されたり否定的な意見をもらってもブレイクスルーする方法を見つけて答えていましたよね。我々が若い頃よりシビアな社会になっています。提案に対しての反対意見も多くあると思うのですが、そういうことを打破する試みはすごく重要だと感じます。

――ご自身は「住まい方×エネルギー」というテーマに対して、どのようにお考えですか?

実は世界全体の1/3が住んだり働いたりしていることで排出されているCO2なんです。意識する機会は少ないと思いますが、エネルギーは暮らしに直結しています。家計支出の5%程度がエネルギーに使われています。今後、脱炭素化の過程で値段も上がると思いますし、国際的に非常に大きな問題ですよね。日本は天然資源がない国なので、どうやって大切に使っていくのかということを他の国以上に考えないといけないと思います。

――勉学に励む、全国の学生にアドバイスなどをお願いします。

未来を考えることってすごく重要なこと。今はコロナ禍でなかなかディスカッションする機会がないかと思いますが、議論をしたりみんなの作品を見たりすることは、一人で考える以上に得られるものがあります。恥ずかしがらずにこういう機会に参加して、意見をもらって、みんなの発表を聞いて、議論して高め合っていけると良いのではないでしょうか。

<審査員 東京電力エナジーパートナー株式会社 高橋徹氏インタビュー>

――5組のアイデアについてどのように感じましたか?

どれも素晴らしいアイデアでした。大変優秀で、みなさん東京電力に入ってほしいと思うくらいです。プレゼン能力もすごく高いですね。喋り方もそうですし、資料もそうですし、中には動画を活用する発表もあり、非常にレベルが高いと思いました。また、いくつかのチームは二次審査での審査員からの指摘について、最終審査時に反映させて変化をつけていたことも印象的でしたね。

――学生のアイデアから感じたことや、印象を率直にお答えください。

発想が斬新で、柔軟でしたね。歳と共に失われていく部分かと思うので、刺激を受けました。電気って「人」に送ると感電してしまうし危ないのですが、「モノ」に送ると価値が生まれるんです。蛍光灯に入ると「光」になり、空調に入れば「熱」になる。そこで初めて価値が生まれているんです。私たちは電気を提供しているのですが、電気を提供することで最終的には「快適さ」や「安全」を提供していると思っています。ただ、それは電気にしか出来ないわけではないとも思っていて、今回の発表を聞いて改めて考えさせられた部分もありました。我々が提供しているものは何なのか、あるいは違った方法でできることはあるのか、ということを考えるきっかけになりましたね。

――ご自身は「住まい方×エネルギー」というテーマに対して、どのようにお考えですか?

審査員メンバーで話していたのですが、ギャップはすごく重要だと思います。ギャップに価値が内包している。電気は今や当たり前のものになっているのかと思いますが、その当たり前を「価値」としてどう認識してもらうかが重要だと思いますね。その時に、電気そのものではなくてその先の価値、住まい方の価値を見せていきたいと考えています。

――今回のアイデアに、手がけられている事業や、提供しているサービスと共通することはありましたか?

テーマがエネルギーだったこともあり、大いにありました。こういったアイデアを参考にしながらうまくビジネスにしていけたら良いなと思っています。つい先日リリースした「太陽光発電」と「おひさまエコキュート」と「蓄電池」を使った暮らしの提案では、太陽光発電で発電したエネルギーを、蓄電池やエコキュートに溜めておくことができます。そうすると通常時だけでなく災害時もお湯や電気が使うことができ、初期費用0でカーボンニュートラルの実現に貢献しながら、「快適」「安心」が手に入るというサービスを始めました。このエネカリプラスは、お客様の屋根を借りて東京電力が太陽光発電をやらせて頂くスキームです。屋根という場所を借りて、ミニ発電所を作らせてもらうというイメージですね。こうしたサービスと関連するテーマもあったので、参考にして発想を広げていきたいなと思いました。

<関連サイト>
「EMIRA」
https://emira-t.jp/