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【動画】永瀬匡、初の主演映画「ズタボロ」“観たくないって思う人にこそ観てほしい”


“痛いのはそこじゃない……それが伝わると……”

永瀬匡がそう語るのは5月9日より公開となる自身初の主演映画「ズタボロ」。
今作は、作家:ゲッツ板谷の自伝的小説を映画化したもので、ケンカに明け暮れる高校生たちの葛藤、そしてそこから生まれる彼らのリアルな思い、様々な感情を描いている。
あまりの過激なシーンに思わず目をそらしたくなる、そんな場面も見られるが、今作の本質はそこにある。永瀬が言うように“痛いのはそこじゃない”。では、それは何なのか。主人公:板谷コーイチを見事に演じきった彼に聞いてみた。

――映画「ズタボロ」が完成し、作品を見て率直な感想は?
「今回は板谷コーイチを演じるというより、自分自身そのままだったんですよ。役になりきれていたのかわからないくらいに。セリフの間や表情とか、全てその状況に合わせて自分が思うことをやってたので、完成した作品を見たら“こんな間を使ってたんだ”とか“こんな顔してたんだ”とか、そういうことが気になりすぎて、最初は全然物語が入ってこなかった。それで、もう一度観させてもらったんですけど、そのときには自分の間とかも気にならなかったので、面白い作品だなって改めて思いました」

――映画を見たら、自分でも驚きが大きかったと。
「そうですね。発見の方が大きかったです」

――でも、今回は初の主演作でもありますよね。プレッシャーなどはなかったんですか?
「今まで、主演という立場の方は絶対大変なんだろうなっていうのはわかってたんですけど、やったことがないから実感がなくて。でも、実際にやってみて自分のコンディションや自分が発する言葉がすごく影響を与えてしまうことがわかりました。あとは、こうして完成した後も僕が作品の代弁者としてやらなくちゃいけない、役以外の部分での責任も感じましたね」

――演技の部分では平気だった?
「自分をそのまま出すだけだったので、今までで一番楽というか。作らなくていいという部分で、無理矢理感情をあげることもあまりなかったから、カメラの前では特に何もなかったです」

――自分そのままというのは、主人公のコーイチに対して人間的な部分で共感できたということ?
「もちろん共感できる部分も多かったし、何より殴られたら痛いとか、そういったすごくシンプルな人間らしさというか、ケンカをするとかそういうことじゃなく、気持ちを素直に出していいって言われてたので、じゃあ出しますって感じでした。今回、初めて主演という立場でしたけど、個人的にはただ出番が多いだけというか。今作を見た人が、もし他のキャラクター、役者が気になったなら、その人が勝ってるわけだし、その人の作品になるのかなって思ったんですよ。だったら、俺はそれに負けないようにしないといけない、そういう新しい感情が芽生えましたね」

――ちなみに今作は2007年に公開された映画『ワルボロ』の続編的な作品ですが、それは見られました?
「プロデューサーさんや原作者のゲッツ板谷さんからは、あらかじめ『ワルボロ』は取っ払って全然気にしなくていいと言われてて。特にゲッツさんからは“俺の話だけど、演じるのは永瀬君だから俺に似せようとしてウソになったら困る”とも言われて。それですごく楽になりました。『ワルボロ』も見ましたけど、あまり気にしてなかったです」

――物語としてはかなりハードな話ですが、こんな学生生活に憧れとか感じます?
「イヤですね、平和に暮らしたいです(笑)。ただ、男としては言いたいことを言ったり、強がったりっていうのは大事かなと思います。肉体的なケンカはさておき、コーイチのように誰かに対して強がりたい、行動で示したい、そういう部分は魅力的ですよね。俺自身、そういう人間でありたいと思うし、そういう人間と関わっていきたいなって思います」

――そういう意味では、今回出てくるキャラクターはみんな魅力的ですよね。
「キャラクターも素敵なんですけど、それを演じるキャストのみなさんも人間としてすごく魅力的だったんですよ。みんな男らしいし、女らしい、すごくリスペクトできる人ばかりで。しかも、それがちゃんとキャラクターにも出てて。それをうまく出してくれた監督をはじめ、スタッフの方々もみんな人間臭くて、作品にその空気感が出てるなって思いました」

――スタッフみんな気持ちを共有してたんですね。
「みんな“やってやろうぜ!”って気持ちでしたね。撮影もカメラを手持ちでずっと頑張ってくれたり、いろいろなところで愛を感じたから、俺も生半可な気持ちじゃできないなっていうのもあったし、一体感がありました」

――今作のタイトルは「ズタボロ」。永瀬さん的に“ズタボロ”になった経験ってあります?
「最近だと、“ズタ”まではいかないけど、今撮っているドラマ(「心がポキッとね」)でありました。先輩方がみんないる中で、盛り上げようとするんだけどみんな全く盛り上がらないシーンがあって、それを何度もやったんですよ。盛り上がらないってわかってても、いくらお芝居とはいえ辛かったですね(笑)」

――最後に、永瀬さんなりの今作の見所を教えてください。
「ポスターなどを見ると血やケンカ、そういった印象があると思うんですけど、誰かを守らなきゃって思ったり、傷みに対してちゃんといたいって感じられることだったり、それは自分に対しても相手に対してもそう思える感覚。そして、親や友だちといった大事な存在に気付かせてくれる作品だと思うんです。でも、それに気付くためには辛いことだったり、見たくないものを見るのも必要で、ある種そういった教材というか、それに近い作品じゃないかなって思います。だから、見たくないって思う人にこそ見てほしいです」

――確かに本編ではポスターから感じる傷みも感じられなくなる、そんな感覚がありますね。
「痛いのはそこじゃないというか……それが伝わると嬉しいですね。今の世の中は、見たくないものを見ないチョイスができるし、人と関わりたくなかったらブロックすることもできる。そんな時代だからこそ見てほしい作品でもあります。きっとこの作品を見たら人は殺さないって思うと思うし。コーイチが最後の最後でとる行動もそれが強さではなく、むしろ弱いからこそのことだと思うんです。そういったことが今はわからなくなってる、人がどれだけ傷付けたらダメになってしまうのか、その感覚がマヒしちゃってるから、そうじゃないっていうメッセージが込められてると思うんです。そこをしっかり観てほしいですね」

© 2014東映ビデオ

<関連サイト>
「ズタボロ」 http://www.zutaboro.com
永瀬匡オフィシャルサイト http://www.ken-on.co.jp/tasuku/