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仲村トオル“老舗の底力を全部出した” あぶ刑事リレーインタビュー#3


『あぶない刑事』と言えば、やはり舘ひろしと柴田恭兵演じるタカとユージ。
しかし、そんな2人を慕いつつもいつの間にか上司になってしまった町田透もまた『あぶない刑事』にはなくてはならない存在だ。
そんな町田透を演じる仲村トオル。シリーズ当初は俳優としてデビューしたばかりの新人だったが、彼はいまや押しも押されぬ大俳優。そんな仲村にとって『あぶない刑事』とはどんな作品なのか……。そして、町田透とは……。

いよいよ1月30日(土)に公開が迫ったラストムービー『さらば あぶない刑事』を前に、“あぶ刑事”連続インタビュー第3弾は仲村トオルにその思いの丈を聞いた。

――今作は公開前から大きな話題になり、前売チケットも好調だとか。

「不思議な感覚です……。そもそも30年前にスタートした作品で、何度かのブランクを経て改めて新作がつくられることになった……。演じている側の感覚としてはそんなに違和感はないんですけど。楽しみにしている方が今もたくさんいるという事実を聞くと、嬉しいけれどこんなこともあるのかなと」

――あるんですよ。期間限定のファンクラブもできたようですし。でも、今回このタイミングでの公開は当初まさかと思いました。

「ですよね(笑)。僕自身、20年前に『あぶない刑事リターンズ』を撮ると聞いたときは“またやるの?”と思って。でも、当時は驚きと喜びが大きかった。今回は“まだやれるの?”という気持ちで、驚きと喜びの中に少々の不安も混じりましたね」

――どんな不安が?

「もちろん年齢的なこともあります。僕自身『あぶない刑事』ファンの1人として最も心配していたのは、“舘さんと恭兵さんがさすがに歳とった……”って、残念な感じを目撃することだったんです。ただ、それは現場でお2人に会った瞬間に消えましたが」

――確かにあの2人が、腰が……みたいなのは嫌ですね(笑)。

「お2人に初めて会ったのは20歳のころで、舘さんと恭兵さんは30代半ば。あんな30代になれたらいいなと思ったところからスタートして、『リターンズ』のときはあんな40代に、『まだまだあぶない刑事』のときは50代になってもかっこいいお2人に憧れて。そして今回も同じように“すごいな、まだかっこいいぞ!”と思ったので、それは杞憂だったというか……余計な心配でした(笑)」

――30年たった今も愛されるというのは、本当にすごいと思います。

「そうですね。ただ、ブランクがあったので、その間にいい感じに醸成されたというか、見る方の餓えを生んだのかなという感じもします。まあ、また見たいという気持ちに応えてこれたということでしょうね」

――今回、前作『まだまだあぶない刑事』からは約10年ぶり。その時間の経過は何か影響しましたか?

「どんなに久しぶりでも自転車の乗り方は忘れないように、僕が町田という役を演じるのは似た感覚なんです。あとはシリーズものではときどき感じる、撮影はされていないものの、その役柄の人物はみんな作品世界で生きていたんだ、実はドラマは続いていたんだというような感覚をもちました。」

――それは、仲村さん自身いつでも町田になれるということ?

「僕が町田になるスイッチを押すのは、舘さんと恭兵さんなんですけどね。自分ではそのスイッチがどこにあるかわからなくて、お2人の前に行くと勝手にオンになるんです(笑)」

――舘さんと恭兵さんがいないとなし得ないキャラクターなわけですね。

「そうでしょうね。ただ、お2人だけじゃなく、監督をはじめとするスタッフや全ての共演者の方々ありきです。町田はみんなにいじられて出来上がったキャラクターだと思うので。人間的には僕とは全然違いますし、僕と町田の共通点は名前ぐらい。(笑)でも、舘さんと恭兵さんの前の自分と、鷹山と大下と町田の関係性はすごく似ているんです」

――不思議な関係ですね、性格は違えど映画と現実がリンクしている。

「このシリーズは昭和61年(1986年)の夏から撮影が始まったんですが、そのときの僕は『ビー・バップ・ハイスクール』という映画を2本しかやったことのない、ほぼほぼ素人に近い、初めて連続ドラマに出る俳優0歳児の状態だったんですよ。そんな中で、最初のテレビシリーズの1年間で擦り込まれたこと、お2人を追いかけてできあがった関係はなかなか拭いきれないんですよね。それは決してネガティヴなものではなく、いい意味で」

――そうやって30年間かけて培われた関係は今作でも充分感じましたし、それがこのシリーズの良さだとも思います。

「本編でもそんなセリフをアドリブ的に言いましたけど、鷹山と大下ほど成長しない人物はいないですよね。映画の中の存在ですけど、本当に珍しい。それこそ世界がこれだけ変化しているのに変わらないのは、ある意味貴重ですよね(笑)。でも、そこが舘さんと恭兵さんの役作りというか、監督含めての協同作業だと思いますけど、変わらなかったことがある意味生き残った理由という気がするんですよね」

――仲村さんにとって『あぶない刑事』とは?

「以前、『まだまだ』のときに『あぶない刑事』を一言で現すと、と聞かれたことがあったんです。そのときすぐに“故郷”という言葉が頭に浮かんだんですよね。俳優として幼いころからいろいろなことを教えてもらい、たくさんの失敗を見逃してもらい、ダメなところをフォローしてもらったり。舘さんと恭兵さんだけじゃなく、スタッフの方々も含め、素晴らしい大人が大勢いる中で育ったという意味ではいまだに故郷という感じもしますし、そういう意味も含め今回は……やっぱり“故郷の祭りは派手で楽しいな”って感じですね(笑)」

――故郷というのは変わらないんですね。

「そうですね。例えば、ある時期、無意識に恭兵さんのマネをしていたり、銃の構え方が舘さんのパクリだったり。本当に自分がかっこいいと思うから、好きだからこそマネしてしまっていたんです。プロの俳優としてはよろしくないことかもしれないけど、あのお2人はプロの自覚を持つ前に出会った方たちなので、自然とそうなったんだと思います」

――今回は一応シリーズ最終作ですよね。その見所は?

「一応じゃないですよ、ラストです(笑)。見所は……やはり“いまだにそんなにかっこいいのはおかしいだろ!”っていうくらいかっこいい舘さんと恭兵さんですね。あとは、老舗の底力を全部出してきたかのようなカーアクションやガンアクション。そしてファッション、セリフ、その言い回し。それは30年間変わらなかったことだと思いますけど、“リアルよりもかっこいい方がいいじゃん”っていう価値観。ずっとやってきたことでもあるんですよね。年齢を言うのもなんですけど、監督もカメラの仙元さんももうすぐ80歳なのに、いまだにパワフルで新しいことにチャレンジしようとしているんです。映画界にはそういったアツい後期高齢者が何人かいて、僕はその年齢まであと30年ぐらい。その間、30年あんなに面白がっていられるのかなと。でも、もしそうだとしたら、相当面白い職業につくことができたわけで、すごく嬉しく思いますね。心強い大先輩たちがいる現場で、その方々の膨大な経験値、身につけたテクニックが発揮され、なおかつ新しいチャレンジをしようとしているということ……、映画はスタッフの年齢を意識して観るものではないですが、やはりそうしてできた作品全てが見所というか、『あぶない刑事』の魅力になっていると思います」

――最後に、町田はこの後どうなるんでしょう?

「彼は多分……『あぶない刑事』の世界では唯一若干成長しているキャラクターだと思うんです。最初のころのように女を紹介すると言われたら何でもする人ではなくなっていますし。ある意味、優秀な中間管理職、組織の中で派手な活躍はしないけど、下からはそこそこ慕われ、上からはまあまあ重宝される存在として、今後も少しずつ出世していくんじゃないですかね」

――個人的には、たまにみせるかっこよさが好きです。今回もありましたけど。

「そんなシーンありましたっけ? 僕の中では町田にかっこいい要素はほぼほぼないんですけど(笑)」

――そうなんですか? 町田のようにはなりたくはない?

「全然思わないです(笑)。町田は鷹山先輩と大下先輩のことを心配しながらも、いつまでたっても露払い的な役割というか。でも、結局は2人に喜んでもらいたいんですよね。そこは僕と似ている、数少ない共通点の1つなんですけど」

映画『さらば あぶない刑事』は、1月30日(土)より全国ロードショー!

© 2016「さらば あぶない刑事」製作委員会

<関連サイト>
映画『さらば あぶない刑事』 http://www.abu-deka.com
仲村トオル http://www.kitto-pro.co.jp/nakamura/topics.html
夕輝壽太“これは一生自慢できること” あぶ刑事リレーインタビュー#1 https://www.entameplex.com/archives/26532
菜々緒“本当に素晴らしい終わり方” あぶ刑事リレーインタビュー#2 https://www.entameplex.com/archives/26708